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 戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを一貫して支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では「第101回 品質管理シンポジウム」(2015年12月3~5日)を「日本の製造業再強化のために品質世界一の確立」をテーマに開催する。日経テクノロジーオンラインは、同シンポジウムの開催に先立ち、シンポジウム登壇者のインタビュー記事を連載する。今回は、エリーパワー代表取締役社長吉田博一氏のインタビューをお届けする。(聞き手は吉田 勝、中山 力)

──昨今、事故やリコールなど日本製品の品質が問われています。今の日本のものづくりや品質、安全をどうみていますか。

吉田博一氏
吉田博一氏
1961年住友銀行(現三井住友銀行)に入行。1996年に同行副頭取。翌97年に住銀リース(現三井住友ファイナンス&リース)取締役社長、2001年に同社代表取締役会長兼社長に就任。2003年慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授。2006年エリーパワーを創業。撮影:栗原克己

 安全はものづくり企業にとって当たり前の話であって、皆で考えなくてはならないものです。我々は、リチウムイオン2次電池(LIB)を開発・製造していますが、私がこの事業を始めたのは、蓄電というものが必ず、これからの世の中を変えることになるだろうと考えたからです。電気を生み出す方法としては、火力だけでなく、再生可能エネルギーもあれば原子力もある。これから新しい発電方法も登場するかもしれない。しかし、安全な社会を作るということを考えた場合、それらを貯めて使えるようにしなければ有効な電力にならない。夜間の電力はものすごく余っているからです。

 それを放っておけないというところから、最初はLIBに貯めて電気自動車で利用することを考えたのですが、自動車の安全性は一朝一夕にできるものではない。エネルギーを無駄なく使うという点に重きをおいた結果、電力貯蔵用の大型LIBを使った住宅用の蓄電池の普及に注力することにしました。

大きくても安全ならいいじゃないか

 ところが、当初、大型LIBを生産してもらおうと大手メーカーに相談にいっても、相手にされなかった。LIBはエネルギー密度もサイクル特性も高く、メモリー効果もない。当時、既にパソコンや携帯電話機などに広く使われていたので、私も安全だろうと考えていました。小型LIBをそのまま大型化するのは危ないと言うのです。

 しかし、私は安全な大型LIBを造ることはできると信じて、2006年に会社を立ち上げました。最初は技術者がいませんでした。そこで、小型のLIBを手掛けてきた技術者を募集し、いろいろ工夫してもらいました。ところが、やはり大型化すると(電気的・物理的負荷をかけた際に)発火しないまでも発煙してしまう。技術者に聞いても発煙は避けられないと言うんです。ですが、それでは目指していた住宅用に使う蓄電池としては、とうてい受け入れてもらえない。

 あきらめずに探して目を付けたのが、オリビン型リン酸鉄リチウム系を正極材料に用いたLIBです。当時、この材料はエネルギー密度が低くて使いものにならないとされていました。実際、我々も試作してみましたが、確かにエネルギー密度が低い。でも安全です。最初は住宅用の蓄電池が目標でしたから「安全ならエネルギー密度を補うために大きさが多少大きくてもいいじゃないか」と割り切りました。エネルギー密度を高めるのはそのあとということにして、安全第一で取り組むことにしたのです。