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既存の車載関連企業にとっての黒船

 従来、車載システムの開発は2~4年と長期間にわたるものが多く、その間に複数回のサンプル開発を経て量産へと移行してきた。しかし、昨今ではIT企業の参入などもあって、開発期間そのものが大幅に短縮されている。中には、構想から3カ月で走行可能な車両のサンプル開発を実現する企業も登場している。

 こうした企業の出現は、既存の車載関連の企業にとって大きな脅威と捉えられ始めている。「従来通りの開発スタイルでは太刀打ちできない」という思いが強い。

 そこで、特に欧州では新たな開発手法を模索する動きが2013年ごろから始まっている。2017年には手法確立に向けたコミュニティーの立ち上げの動きへと至っている。こうした課題は特定の企業に限定されたものではなく、企業の垣根を越えて課題解決に向けた経験、ベストプラクティスの共有が始まっているのである。

アジャイルは車載システム開発の救世主となるか

 課題に対する新たな開発手法として欧州で注目されているのが「アジャイル」である。そこには、完成車メーカーと部品メーカー、さらにその先の2次サプライヤー、3次サプライヤーの間で段階的に完成イメージを共有しながら要件を早く確定したり、問題と解決策を共有したりしていきたいという期待がある。

 ただし、すべての開発をアジャイルに置き換えたいという期待ではなく、「Aサンプル」「Bサンプル」といった早い段階の開発フェーズで、アジャイルをベースに有効な開発手法を確立したいという思いが強い(表1)。

表1 開発フェーズごとの期待と開発スタイル
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表1 開発フェーズごとの期待と開発スタイル

 現時点では、教科書通りにアジャイルを適用するのではなく、「有効な手法やプラクティスを抽出していきたい」という方向性が強い。これまでの数年間でさまざまな企業が試行を繰り返しながら、車載システム開発の特徴に適した手法、プラクティスの評価や、車載システムの中でもアジャイルに適したアプリケーション分野、プロジェクトの特性などの統計データが収集されている。

 すでにアジャイルを試行している企業からは、さまざまな賛否両論の意見が出始めている。ある完成車メーカーの非公式な発表によると、アジャイル開発が適したプロジェクトは現時点で全体の2割程度という見解もある。業界内の統一見解に至るには、もう少し試行結果を積みながら検討を続ける必要があると思われる。