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 21世紀が幕を開けた当時、電機産業はモバイル機器へのシフトの渦中にあった。携帯電話機が急増し、ソフトウエア技術者が、成長が衰えたコンピューター部門からモバイル部門へ異動し始めたころだった。増大する開発項目を消化するには、適切な開発体制を構築している余裕はなく、まず、コンポーネント開発を先行させて、擦り合わせながら製品を完成させていく開発スタイルが主流となっていた。

 それから15年が経過し、組み込み製品に対する開発体制は、開発現場の努力によってそれなりに確立した。それでもまだ、解決していない課題が残っている。その1つが、ハードウエア技術者とソフトウエア技術者の共通理解である。システムを共通に理解できる表記法がない。

 新たな課題も出てきた。最近、続々と登場している機能安全規格への対応が、その1つだ。この種の規格に対応するには、ハードウエアやソフトウエアというコンポーネントを開発する前に、システム全体の視点から安全を侵害する状況や条件などを識別して、その対策となる安全制約を定義することが求められる。

 一人前と言えるようになった組み込み製品開発だが、現在、直面しているこれらの課題を克服するには、今まで注力してこなかった、システム視点で設計するプロセスが重要になる。このプロセスを遂行できるスキルを持つハードウエアまたはソフトウエア技術者が必要となる。最近、注目を集めているシステム記述言語の「SysML(Systems Modeling Language)」の習得と活用は、この役に立つと考える。本稿では、SysMLがどんな特徴を持ち、どんなことに使え、どんな役に立つのかを解説する。

システム記述のための表記法

 SysMLのアイデアは、2003年ごろにさかのぼる。ソフトウエア開発で使われているUML(Unified Modeling Language)を拡張して、システム記述に使おうという方向で検討が進み、2007年にオブジェクト指向を推進している「OMG(Object Management Group)」という団体が標準仕様を公開した。その後、2009年にOMGは「OCSMP(OMG-Certified System Modeling Professional)」という資格認定を始め、2012年6月に仕様がバージョン1.3に改版され、今日に至っている。

 SysMLの活用分野は、当初は欧米を中心に航空や宇宙、防衛に限られていたが、今では、自動車や医療、IT分野へと拡大している。国内においても最近、SysMLの利活用に関する話題に触れることが増えた。「組込み総合技術展(ET2013)」では、SysMLを表題に含む発表が、テクニカルセッションと設計・検証ツールトラックでそれぞれ行われた。2014年2月には、日本OMG主導でSysML利活用協議会が発足するに至っている。