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現場ヒアリングをしてテーマを決めるという“分かりやすい病”

 なぜ、改革を行うときに設計の間接業務ばかりになり、直接業務の改革がおざなりになってしまうのか。それは改革の進め方に大きく依存している。理由は2つある。

 1つめは、「現場ヒアリングアプローチ」の問題だ。改革をする際に、社内改革推進者や外部ベンダーは、設計部門に対して課題アンケートやヒアリングを実施することが多い。しかし、設計者から出てくる課題は、「CADファイルの検索が煩雑ですぐ探せない」「検索画面の項目が足らない」「設計変更登録(ECO)の登録を楽にしたい」「ECOの一括処理ができない」「ワークフローで承認がやりにくい」「部品表登録が手間」「品番の自動登録機能がほしい」などの間接業務の課題ばかり出てくる。

 設計者は直接業務の非効率さに気付いておらず、目に見えて分かりやすい間接業務の課題ばかりが出てきてしまう。設計の直接業務や設計そのものを良くする課題もまれに出てくるのだが、数が少ない。課題アンケートの結果は、分類ごとにグラフにしたり、数の統計を取ったりするが、量の多い課題から優先順位を付けて改革のテーマに挙げるという手順を踏むため、まれに出てくる直接業務の課題は重要にもかかわらず優先順位が「低」となり、後回しになる(ここでいう後回しというのは、やらないに等しい)。ここでも本質的な重要性を無視して、数の論理で物事を決めてしまう“分かりやすい病”にかかっている。

 話が少し脇にそれるが、間接業務の改革の方が、システム導入の際も都合が良い。「図面検索の操作性が悪い」という課題が多くあったとしよう。使いにくい画面より使いやすい画面の方がいいが、現状でボタンを3回押すところを、ボタンを1回押すシステムに変更して、設計は強くなるだろうか。経営者は、ボタン3回を1回に変更することを望んでいるだろうか。

 確かに、現場のこのような細かな(どうでもいいような)要望を聞いておいた方が、システム要件定義の現場はスムーズに進む。設計システムの刷新と銘打ってプロジェクトが立ち上がっても、蓋を明けてみたら、このような現場の(どうでもいいような)操作性を、一生懸命、話し合っているのを目にする。その方が、システム設計を“やっている感”も出るし、“議論している感”もあって、進捗報告しやすいからだ。

 しかし、画面設計(表示項目・配置・画面遷移)は好みが強く出る領域である。だから、プロジェクトに参加したAさんの納得がいく画面を作ったとしても、別のBさんに聞いたら全然ダメといわれることも少なくない。そんな好みの世界の議論をしても競争力にならない。付加価値の少ない領域に時間とお金を使っても意味がないのだ。システムでいうなら、データモデル(データキーや可変性など)の部分に注力して議論すべきである。