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 衝撃的なデビューから10年が経過したNISSAN GT-R。様々な憶測を呼んだ名物チーフエンジニアの交替からも既に4年である。伺いたいことは山ほどある。

 最新のGT-Rは前と比べて何が変わったのか。変わった理由は何か。そして、GT-Rはこれからどうなるのか。

 インタビューの直前に、開発エンジニア、日産自動車ニスモビジネスオフィス兼第一商品企画部チーフ・プロダクト・スペシャリストである田村宏志さんに海外からの緊急連絡が入ってしまい、はじめの30分は開発メンバーの一員である柳井さんが対応してくださった。そして前号(「その時代にできるギリギリのところまでやる」)では、その柳井さんからのお話“のみ”をお伝えした。

 記事が公開された先週の月曜日、クルマで会社に向かう途中、田村さんから電話が入った。記事には問題点が二つ有ると言う。

 一つ目は、“水野GT-Rは硬く、田村GT-Rは柔らかい”という表現だ。「そんな単純なものではない。水野さんは全てのシーンを1台でカバーしようという”オール・イン・ワン”の発想。この田村は、シーンによって異なる味付けのクルマを用意する”使い分け“の発想だ。だからこそ基準車の他に、ガチガチに固めたトラックエディションと、更に高馬力のNISMOがある」、と。

 そして二つ目は、「“点から線へ、そして面へ”。という表現は、2017年モデルからではなく、田村に開発がバトンタッチされて以降ずっと主張していること。これはウチの柳井の勘違いで、プレゼン内容が間違っている。彼には後でキッチリ言っておくから」、とのことだった。

 田村さんはお話をしていると、「キッチリ決める」と「アタマを取る」というワードを頻繁にお使いになる。柳井さんがこの電話の後でどのようなお咎めを受けたのかは知る由も無いが、田村さんは怒ると怖い。怒らなくても目が怖い。柳井さんのご無事を心よりお祈り申し上げる次第である。

「今回3タイプのクルマを用意したのには理由がある」

 インタビュー開始から30分が経過した頃、遂に田村さんがやってきた。

「いやぁ悪い悪い。急なテレカンが入ってしまってね。お詫びと言ってはナンだけど、今日はフェルさんのどんな意地悪な質問にもキッチリ答えるからさ。時間はタップリ取ってある」

 早速“キッチリ”が飛び出した。田村さんのご機嫌は麗しく、のっけからアクセル全開のご様子である。柳井さんは少し緊張した表情で、“何をどこまで話したか”を田村さんに報告している。フンフンと頷く田村さん。

田村さん(以下、田):もう乗ってもらったんだよね、ウチの子達には。

F:はい。基準車とトラックエディションとNISMO仕様と、全ての車種にそれぞれ1週間ずつ乗せて頂きました。最後のNISMOでは、品川駅前で「違法改造車ではないか」と白バイに止められる騒動までありました。お陰でいい写真を撮ることが出来ましたが(笑)

:そりゃ災難だったね。でもほら、最近の警察はドライバーの人相を見ているという話だからさ(笑)

F:な……。

:今回3タイプのクルマを用意したのには理由がある。それはGT-Rの“在り方”そのものを考える上でとても大切なことなんだ。フェルさんには、まずはじめにそれを十分に理解しておいて欲しい。エンジンパワーが上がったとか、ボディが強くなったとか言うことよりも、もっと根源にあるものなんだ。

F:ははあ。開発の根源にあるもの……。

:そう。そしてこの考え方は、なにも今のGT-Rに始まったことではなく、2001年にGT-Rコンセプトを出した時、そしてR34のM(マチュアー)スペックを出した時から既に始まっている、ということを説明しておきたい。

F:なるほど。よろしくお願いします。