PR

「GT-Rの世界が狭すぎやしないかと」

:それまでのGT-Rは、スパルタンなイメージばかりが先行していて、筑波のタイムアタックで何秒が出たとか、ゼロヒャク(停止状態から時速100キロに至るまで)が何秒だとか、油っこい世界だけを表現していて、我々としても、そこがウケているのだと信じ込んでいたのだけれど。

F:実際にそうじゃないですか。それこそがGT-Rのアイデンティティで、お客にはそこがウケていたのではないですか。

:うん。ウケていたのは間違いない。でも本当にそれだけで良いのだろうか。もっと広がりをもたせる必要は無いのだろうか、という自問自答は常にあったんだ。

 例えば革シートをはじめとする上質な内装とか、より快適な乗り心地とか。ガチガチでスパルタンで油臭いものだけ、というのでは、GT-Rの世界が狭すぎやしないかと。日産というひとつのメーカーとして、何が高級でプレミアムなのかと。例えば、R33のGT-Rをイギリスで販売しようとしていたとき、「何でシートが本革じゃないの?」とか言われちゃう。

F:そのころの日本のスポーツカーに本革仕様はありませんでしたか?

:うん。少なくともホットバージョンのスポーツカーでは無かったね。後付でレカロの革シートとか、そういうのはあったかも知れないけど。

F:なるほど。

:彼らにとっては当たり前のセンスを指摘されて、そうか、やっぱり欧米の人たちにとって当たり前のスポーツカーのゾーンを、我々は正しく表現できていないんだなと。“大人”が乗るためのスポーツにはそういうプレミアム感が必要なんだなと。

R34世代の末期、2001年に発売されたスカイライン GT-R M・spec「大人の感性を刺激し、大人のこだわりをも満足させる、もうひとつのGT-R」を商品コンセプトに開発された。
R34世代の末期、2001年に発売されたスカイライン GT-R M・spec「大人の感性を刺激し、大人のこだわりをも満足させる、もうひとつのGT-R」を商品コンセプトに開発された。

 あ、もちろん革シートは分かりやすい一例で、内装に革を張って上等でござい、などと言うつもりは更々無いからね。ともかくGT-Rもマチュアーな人たちの需要に応えなければいけないだろうと。それがMスペックの発端だった訳でしたと。スパルタンがイコールでスポーツじゃないよねと。

F:それは比較的上の年齢層のマーケットを狙うということですか。

:Mスペを開発した時に、自分はまだ30代だったのだけど、自分のリタイヤ間際の姿を想像してみた。自分が55歳ぐらいになったらどうなっているだろうと。

 そろそろ会社もリタイアだし、体にもあちこちガタが来るだろうし、「自分の人生総点検」みたいな時期が来るわけじゃない。そのときに一緒にいられる相棒みたいなスポーツカーがあったら良いなと。Mはそんなクルマを目指して作った訳。

F:定年間際の人の相棒としてのクルマ、ですか。