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それを続けていたら、いつしかクルマも売れていきましたとさ

:そう。営業にはそれぞれテリトリーがある。そこで、話の内容を工夫した。FRの仕組みはこうです。特にスカイラインのマルチリンクサスペンションはキャンバー角がなかなか変化しないから、アンジュレーションって波を打つ道でも、常にキャンバー角が一定で、ビシっと追随しますよ、グリップしますよと。

F:そんな専門的な話を……。

:床下にコストを掛けているので、内装が良いものが欲しいんだったら、悪いけどマークIIを買って下さい。内装はウチの負けですからと。ウチの方が良いですなんて一言も言わない。でもウチは床下にすごくカネを掛けていますということを、パッションを込めながら図解で説明をする訳。

F:それは面白そう。聞きに行きたい。

:でしょう。聞きたいでしょう。当時はネットなんかない時代だから、それが口コミでジワジワ広がって行くわけ。あのプリンスの田村って奴の話は何か知らんけど面白いらしいぜと。もちろんスカイラインだけじゃなく、日産のラインナップもちゃんと説明する。

 ステージアが出たときは、実はこのクルマ、スカイラインのステーションワゴン版です、みたいな説明をするわけ。こんな架台になっていて、下から見るとスカイラインとステージアは見分けが付きませんよという写真を、わざわざ撮って見せるわけよ。レガシィにも走りで負けませんよ、と。

F:これは良いですね。絶対ウケるわ。

:それを続けていたら、いつしかクルマも売れていきましたとさ、というお話(笑)

喧嘩太郎と思いきや、実は手書きのDMをコツコツと送り続けるという、きめ細やかな仕事もこなす田村さん。いつしかファンが拡大し、出向2年目にして販売店のレコードを塗り替える、押しも押されもせぬトップセールスへと上り詰めた。GT-Rの開発から、話は相当掛け離れてしまったが、ここまで来たのだもの、せっかくだからトップセールスの田村さんから営業のキモを聞いておこう。

:どうしたら売れるかって? そうだね、お客様へのプレゼンテーションは、はっきり言って最初の15秒から20秒で終わっている。お客さんの興味はどこにあるのか。事前の推測が有って、こちらが最初に話す言葉に対するリアクションがあって、それを見逃さない視点が要る。それが大体15秒から20秒。

 本当に生意気を言うようだけど、それでだいたいは分かる。でも分かるのは、「この人は買うだろうな」、ということではなく、「この人は買うゾーンに入ってきたな」という程度のもの。その中から本当に買ってくれるのは10人から20人に1人くらい。だけど、そのゾーンに入らない人は、100%買わない。それは間違いない。

短期間で140台のレコードを打ち立てた田村さんは、2年間の出向期間が終わり、本社へ戻ることとなった。販社の社長は、当然「お前は営業に向いている。このままウチに残れ」と強く強く慰留した。多額の販売報奨金が入るので、当時の所得は「今の年収よりもぜんぜん高い」ものだった。それでも田村さんは日産に戻った。入社以来の夢である、スポーツカーの開発をしたいからだ。


 だいぶ長くなってしまいましたが、本社へ戻った田村さん。どのようにGT-Rへ携わっていったのか。次号から漸く始まります。

 お楽しみに!