PR

 スカイラインの歴史。GT-Rの立ち位置。そしてプレミアムとは何か、についてジックリとお話を伺ってきた今回のインタビュー。今回は(漸く)2017年モデルのGT-Rについてお話を伺おう。

 ただし、ここではエンジンのパワーアップや操縦安定性の向上についての、技術面からのアプローチは避けようと思う。既に他のメディアにゴマンと出ているからだ。せっかくの機会だもの、他のメディアには出てこない、「その他の話」を深耕して行こう。

ラジエーターを大きくせず、“大口”にした理由

F:今回のGT-R。ハイパフォーマンスバージョンのNISMOでは、ついに600馬力の世界に至りました。ノーマルでも570馬力と大変なパワーです。それに伴って、ずいぶんと“口”が大きくなりました。

田村さん(以下、田):パワーを上げ、トルクを上げたのだから、相対的にエンジンの熱量が増える。前よりも温度が上がるのだから、前よりも強く冷やさなければいけない。いっぱい冷やす方法は2つ。ラジエーターをデカくするか、空気の入口をデカくする。今回俺達は口を大きくする方を選んだ。でも実は、ラジエーターをデカくする方が、コスト的には安いんだ。

F:そうなんですか?口を開けたほうが断然安いのかと思っていました。

:逆逆。ラジエーター大型化のほうが断然安い。口をデカくしたら、バンパーの型を新たに起こさなきゃいけない。型を起こすには多額のカネがかかる。しかもデカい口は、それだけ穴が大きいからCd値(空気抵抗係数)も悪くなる。

 それじゃなぜラジエーターを大きくしなかったのか。話は簡単で、大きくすればそれだけ重量が増えてしまうからだ。しかもクルマの重心位置から一番遠い位置の、タイヤの前にあるオーバーハングの部分が重くなってしまう。

F:なるほど。クルマの隅に重量物を置けば、それだけヨー軸慣性モーメントが大きくなり、回頭性も悪くなる。

:分かってるじゃん。ヨー軸(笑)

F:あ……いえあの……。

:まあ良いや(笑)。前の方に重いものは置きたくない。でもCd値も悪くしたくない。となれば、開口部を広げても空力が悪くならないように工夫しなくちゃならない。

F:よく改造車で、これ見よがしにデカいラジエーターを後付けしている人がいますが、あんなのはクルマの設計からすれば全くナンセンスという事になりますね。

:いや、一概にそうとも言えない。もともと270馬力のクルマをチューンナップして500とか600とかに持っていけば、そこではやはり思い切り大容量のラジエーターが必要になってくる。前にも言ったけど、クルマの性能は、様々な要素が複雑に絡み合って出来ている。ある一面だけを見て、あれは良いとかこれは駄目とか言うのはとても乱暴だし危険なことだ。

 17年モデルのGT-Rは、前の口から入った空気を、サイドからスッと抜いて熱を逃してやるわけ。ラジエーターの増量だけだったら、5000~6000万円程度の投資で済むのだけれど、今回フロントバンパーは変えるわ、サイドシルは変えるわ、リアバンパーも変えるわで、もう何億円を使っている。でも、それだけの効果は間違いなくある。

F:普通のお客さんは分かりますかね。そんな微妙なこところが。

:分かる。お客さんは、「おっ!一新したじゃないか」と必ず分かってくれる。