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──中国人従業員とコミュニケーションをとる際に、気をつけるべき点はありますか。

前川氏:中国人従業員との間でコミュニケーションがうまくいっていない日系企業でよく感じるのは、中国や中国人のことをよく知らないなということです。日本人は、外見が似ているだけで中国人を自分たちの仲間だと思いたがるようですが、全く考え方が違う「異なる人たち」だと認識すべきです。

 確かに、今の20歳代の中国人を見ると日本人とあまり変わりません。同じようなファッションや音楽を楽しみ、スマートフォンを使ったSNSで友人とやりとりするのも変わらない。若い日本人の中には、中国からの留学生やアルバイトをしている中国人と知り合って親近感や友情を覚える人もいるでしょう。しかし、日本に来ている中国人はごく一部です。

 中国から日本への旅行客は2014年に240万人で、2015年には400万人を超えると推測されています。相当な金額を使うことから、「爆買い」などと日本では報じられています。こうした報道から、日本への中国人旅行者は富裕層ばかりだと考えている日本人は多いと思います。しかし実際は、家族や友人、知人からお金を預かって買い物のために日本に来ている中国人がほとんどです。本当の富裕層は一部しかいません。

 日本人の問題は、こうした一部の中国人を見て「日本や日本人を理解してくれた」と勝手に思い込むことです。日本へ来る中国人が増えて民間友好が進んでも、それは一部でしかありません。たとえ友人になったとしても、ビジネスは全く別物。ビジネスは契約に基づいてお金が動きます。日本人は、親しいから良くしてもらえる、大目に見てもらえるなどといった期待をする傾向がありますが、そんな甘い考えを中国人は持ってはいません。むしろ、親しくなるほど南京事件のような話を日本人に向けてしたがるのです。国際社会の批判や周辺国の意見など構わずに東シナ海のガス田を開発したり、南シナ海に人工島や空港を造ったりと、国際社会の中ではまだまだ異端的な行動をとる国民であることを忘れてはいけません。

 中国人は日本とは異なる文化で生きている人間であると改めて認識した上で、甘い情など捨てて割り切った考えで、日本人はビジネスを進めるべきです。また、政治的なリスクも考慮しなければなりません。

 ビジネスにおいて中国人は損得勘定がはっきりしています。日本では筋を通すことを重視しますが、中国では相手に合わせて豹変する人が優秀と見られます。相手が自分にとってメリットをもたらすと感じれば、何でもやろうとします。ここで互いの「常識」を議論しても仕方がありません。持っている常識が異なる者同士が「常識とは何か」を議論しても意味がないからです。日本人の対中ビジネスの弱点がここに表れています。

 また、日本人の多くは中国人を1つの民族のように捉えがちですが、実際には中国には多数の民族がいます。しかも、13億人を超える人口を持つ大きな国なのです。そのため、実は中国人同士でも互いに異文化の人間と捉えている面があり、常識が違うことを認識しています。しかし、仕事になれば組みます。対中ビジネスにおいて、日本人はもっとビジネスライクになった方がよいと思います。私は長年中国に住んでいるのですが、中国や中国人のことを知れば知るほど、そうした思いは強くなります。