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小松技術士事務所 所長 小松道男 氏
小松技術士事務所 所長 小松道男 氏
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 プラスチックで世界をリードする欧州。広大なグローバル市場を持ち、堅実なニーズを生む航空宇宙や医療産業を域内に抱えることから、材料や金型、射出成形機の技術でも、環境規制の動向でも世界の先端を行く。こうした世界最先端の技術や動向を「日本企業はいち早く押さえて応用展開に生かすべき」と説くのが、「技術者塾」において「世界をリードする欧米企業に見る プラスチックの最新応用技術」〔2017年2月24日(金)〕の講座を持つ、小松技術士事務所所長の小松道男氏だ。欧州のプラスチック技術や動向を把握する利点を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──プラスチック分野の技術は欧州が世界をリードしていると聞きます。どういうことでしょうか。

小松氏:欧州は射出成形機の生まれた地域であり、現時点で売り上げ規模世界一の樹脂メーカーであるドイツBASF社もある。材料から金型、成形技術まで世界の中心的な存在としてこれまで世界を牽引してきました。今なお、金メダル(世界一)を取れる種目(分野や技術)がたくさんあります。日本にもあるのですが、欧州の方が取れる種目が多いのです。

 その理由の1つは、欧州メーカーが抱える市場規模が大きいからです。例えば、金型や射出成形機で見ると、欧州メーカーは、EU域内はもちろん、ロシア、中近東、アフリカ、インド、中国、米国、中南米、オセアニアと世界規模で事業を展開しています。これに対し、日本メーカーの場合、主要な顧客は日本と中北米、中国、東南アジアに絞られていることが多いのです。

 つまり、欧州メーカーの市場規模は日本メーカーの数倍もある。必然的に、生産量の規模も大きい。例えば金型の取り数(1回の射出成形で加工できる成形品の数)は概ね64個程度と日本の金型よりもはるかに多い上に、さらにその上を行く128個取り、216個取りという大型の金型を開発することも珍しくありません。ここまで大規模な金型は日本では考えられません。

日本にはない「出口産業」

 もう1つの理由は、新しいプラスチック製品を実用化する「出口産業」が充実しているからです。欧州には自動車と電機産業の他に、航空宇宙産業と医薬品産業を持ちます。例えば、フランスには航空機メーカーのAirbus社があり、欧州宇宙機関(ESA)の本部があって、ロケットを打ち上げるArianespace社もあります。従って、航空・宇宙分野の先端ニーズを吸収しやすく、それらに応える新しい技術が生まれやすい環境があるのです。

 医薬品分野では、世界的な感染症に効くワクチンや薬の開発が欧州を中心に行われています。ここから生まれるニーズを捉え、薬剤を投与するために工夫された回転式の容器や、均一に薬液が噴射されるスプレー噴霧ノズルなど、毎年数十億個も消費される新しいプラスチック製品が開発されているのです。

 日本は金型や成形に関して高い技術力を持っています。特に、高精度で高精密な金型や成形技術は欧州に負けていません。ところが、残念ながら主要な出口産業が自動車産業と電機産業の2つにほぼ限られてしまっています。そのため、自動車と電機産業以外の幅広い分野の新しいニーズを吸収し、それに応える技術を開発することに長けていません。