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「閉塞感」の理由

──その影響は日本メーカーに見られるのでしょうか。

小松氏:影響が出てきていると感じます。日本メーカーの設計者や生産技術者は、どうしてもクルマや電機製品ばかりに視線を向けてしまう。しかも、コストや開発期間などの条件が厳しくなる一方なのに、さらに付加価値の高い技術の開発を余儀なくされるという環境の中で、閉塞感を覚えている技術者が増えています。実際、ここに来て新しい発想ができずに困っているという技術者の声をよく聞くようになってきました。

 2つの産業だけに縛られて国内で激しい競争をするだけではなく、もっと世界に視線を向けた方がよいでしょう。そのために欧州の最新技術や動向を把握することがお勧めというわけです。

 欧州のプラスチックに関する技術や動向をつかめば、日本にはない出口産業が求めているプラスチック製品や射出成形のプロセス、金型の造り方の情報を得ることができます。これらをキャッチすれば、宇宙航空産業や医薬品産業向けのプラスチック製品の需要を獲得できる可能性があります。それだけではなく、クルマや電機製品向けの新しい技術や製品を生み出す際の発想のヒントにすることもできるのです。

ポイントは早くキャッチすること

──日本企業がチャンスをつかむにはどうしたらよいでしょうか。

小松氏:ポイントは、欧州のプラスチックに関する最新情報をいかに早くキャッチするか。現状では、日本でこんなことが起きています。例えば、新薬が開発されて新しい容器と共に日本市場に入ってくる。それが処方されて初めて日本人はその容器の存在を知り、そこに使われている技術を知る、という具合です。これではさすがに遅すぎる。その時点では既に世界標準となっており、特許権も意匠権も押さえられていて、技術の新しさが消えてしまっているからです。

 医薬品では、従来にないパッケージがあったり、新薬を投与するための特別な形があったりと、日本では考えられないようなプラスチック製品が欧州から誕生しています。例えば、鼻孔に投与するスプレー式の薬液では、霧状の薬液が的確に散布されるように計算され尽くした微細な穴が開いたプラスチック製容器が使われています。しかし、こうした容器を世界に先駆けて成形する金型は日本にはありません。

 逆に、いち早く欧州の情報をキャッチし、日本で金型や成形機を開発できれば、日本がグローバル製品に関われる可能性がぐんと高まります。日本が持つ金型や成形技術の高い潜在能力があれば、Airbus社や英国GlaxoSmithKline社のようなグローバル企業の仕事が取れる可能性が高まる。開発情報を先に把握すれば、優れた製品を提供することに近づけるはずです。

 日本の強みである自動車産業と電機産業へ展開する道も拓けます。異業種である航空宇宙産業や医薬品産業が必要とする最新のプラスチック素材の特性や金型、成形技術を、クルマや電機製品の分野に応用する方法を探ればよいのです。欧州の情報を、これまで日本が固定観念で造ってきたプラスチック製品を違う方法で造るための発想のヒントとして使うことができます。少なくとも、日本の技術者にとって新たな「気付き」を与えてくれます。異業種に加えて、文化や習慣、考え方の違いも欧州のプラスチック分野の技術や動向に反映されるからです。