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工場全体を見たマネジメントが消失

──日本の工場でそうなら、海外の工場の運営は一層厳しくなるのではないかと心配になります。

古谷氏:その通りです。グローバル化の流れで工場力の低下、もっと言えば、生産マネージャーの実力低下を肌身で感じる日本企業もあります。具体的に説明しましょう。例えば、海外工場を多く持つある日本企業は、課長クラスを副社長として海外工場に派遣しています。任務は、工場全体を統括してマネジメントすること。拠点数が増えるにつれ、派遣する人数も増やしています。ところが、ここに来て「生産マネージャー人材の枯渇」という問題に直面しています。

 例えば、拠点が100あれば、100人の課長クラスを派遣しなければなりません。しかも、その100人だけでは済まない。1つの拠点に複数の人材を送り込む必要がある場合もありますし、さらに、国内では次に派遣できる人材候補者も確保しておく必要があります。100の拠点を運用するとなると、全てを数えると数百人もの人材、つまり拠点数の3~5倍もの人数の生産マネージャーが必要なのです。

 優秀な生産マネージャーは異なる海外工場を転々とし、次々と海外工場の力を高めていきます。でも、その分、優秀な人には負担がかかってしまう。一方で、トラブルを起こしたりいつまでもなじめなかったりして任期満了を待たずに日本に帰ってくる人や、任期を全うしても経営成果を出せない人もいます。あるときから、成果を出せる優秀な人材が減り、うまく成果を出せない人の比率が増えてきたと、この日本企業は悩んでいるのです。

──日本企業の中で何が起きているのでしょうか。

古谷氏:多くの場合、実務で成果を挙げてきた人が昇格し、生産マネージャーを担っています。それはよいのですが、問題は、工場全体を見る際のポイントを教わることなくそのポジションに就いていることです。

 例えば、製造課長から工場長に昇格した。ところが、製造分野に関しては熟知しているものの、設備や材料、品質など他の分野のことはよく分からない。工場長としては知らない部分も管理下に置かなければならないのに、他分野の管理の方法や考え方を身に付けていないのです。

 こうなってしまう理由は2つあります。1つは、体系的な教育を受けていないからです。既に前任者から体系立った教育を受けずに、見よう見まねでやり繰りしてきた。先輩から「私の背中を見て覚えなさい」と言われて育ったからです。そのため、次の世代に何を教えたらよいか分からないのです。もう1つは、教えることができる、教えるべき人材がいないからです。例えば、経験を含めて豊富な暗黙知を持った50歳代以上の人材が、定年退職やリストラクチャリングなどさまざまな理由から減っている企業が多いのです。

 要は、工場長を含めて生産マネージャーに教えるべき内容が明確ではない上に、しかるべき「先生」もいない。結果、工場から「工場全体を見たマネジメントの実務と要点」が消失してしまっているというわけです。