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こうして早く成果を出す

──三現主義と聞くと当たり前のように思えますが、意外にできていないということなのでしょうか。

古谷氏:実はそうなのです。「誰が見たのか」「何を見たのか」「現物はどこにあるのか」といった問い掛けが本当にできていますかと尋ねると、「YES」と答える生産マネージャーは少ないのです。そして、彼らからの報告に対して「それは事実か?」「見たのか?」と追及できる工場長はもっと珍しい。皆、忙しいのでしょう。部下からの報告を鵜呑みにしてしまいがちです。課長や係長クラスの中には、別の人が見たのに、いつのまにか自分が見たかのように報告する人もいます。

 しかし、その影響が、例えば冒頭に示した「問題解決の遅さ」として現れているのです。トラブルの解決速度が遅くなった原因を紐解(ひもと)くと、三現主義が徹底していない。例えば、その都度調査を行っており、確認を何度もやり直すため時間がかかる。最初から現場で現物を見ていれば、その場で原因が分かっていたのに…。急がば回れ。忙しいから、あるいは人数が絞られているからこそ、三現主義を徹底した方が、時間は短縮できるということが分かるはずです。従って、多忙を理由に三現主義の優先順位を下げてはいけません。意識して優先順位を高めておく必要があります。現在はITツールなど補助ツールを使って三現主義を進める方法もありますが、その前に、まずは意識を変えるべきです。

──工場マネジメントを進めるといっても、成果が出るまでに時間がかかるというイメージがあります。急いては事をし損じるという諺(ことわざ)があるのは分かります。でも、生産マネージャーには厳しい成果が求められるという現実があります。できる限り早く成果を出す方法はありませんか。

古谷氏:その気持ちはよく分かります。そうした要求に応えるために、私は工場マネジメントの実務と要点を「10ポイント」にまとめて体系化しました。その上で、速効性のある取り組みと、じっくりと工場の足腰を強化していく取り組みの2つを用意しています。前者を「風邪薬」、後者を「漢方薬」と表現すれば、イメージしやすいでしょうか。

 100点満点を目指してあらゆる取り組みを進めると時間がかかります。短期間に成果を出したい場合は、10ポイントのうち優先すべきポイントから着手します。各ポイントの中には、さらに複数の取り組みが存在します。これらも全てに取り掛かるのではなく、速効性のある取り組みを選んで優先して実行に移すのです。

 ただし、バランスをとることが大切です。風邪薬で症状を抑えることはできても、体質改善はできません。逆に、漢方薬だけでは症状の緩和に時間がかかってしまいます。従って、短期間で成果を出したい場合は、まずは速効性のある取り組みに重点を置きながらも、じっくりと工場の足腰を強化していく取り組みを並行して進めていかなければなりません。工場マネジメントを担う生産マネージャーはこうした2種類のクスリを持ち、かつ、目的や症状に応じて双方のクスリの服用バランスをうまくとらなければならないのです。どちらかに偏ってはいけません。

 焦りすぎると逆効果ですが、それでも「短期間で工場が変わった」という印象を外観や動きなどで分かりやすくメンバーに示すと、うまくいくケースが多いというのは事実です。じっくりと足腰を強化する取り組みを続けると必ず成果は出ますが、時間がかかる点をメンバーに理解してもらわないと、継続することが難しくなる可能性があります。

 それでも、「対症療法は要らない。基礎からじっくり強化してほしい」と言う経営者もいますし、「まずは数字だ!」と言う経営者もいます。自社の工場の置かれた状況や強み・弱みなどを踏まえて、柔軟に工場マネジメントができること。これが、これからの優秀な生産マネージャーに求められる条件です。