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 実車状態とユニット単体状態での違いは、ブレーキやトランスミッション、各種ジョイント、アイドリング輪(駆動輪でない方の車輪)といった全てのユニットで生じます。筆者の経験では、実車状態をユニット単体で再現することは非常に難しいことであり、膨大な検証テストが必要になります(再現不可も多い)。また、モデルごとにタイヤの諸元(サイズの違いや燃費志向/騒音志向/グリップ力志向など)や3次元取り付け角、ベアリングのジオメトリ角、ブレーキ諸元、トランスミッション諸元、各種ジョイント諸元、アイドリング輪の諸元が変わるので、モデルごとに検証をしなければなりません。

 スズキは、「モデルごとの諸元の違いも含めて、実車での惰行法の値と単体の積み上げ法の値の相関関係をとった」と言っていますが、諸元の違いまで含めると天文学的検証になるので、にわかには信じがたい。自動車の走行抵抗値を低減するために、ユニット単体の特性を測定解析して抵抗低減方法を研究することはあります。しかし、それらの総和をとって惰行法に代わる方法にしようと考えるメーカーはないでしょう。

 スズキは、惰行法を採用しなかった理由として、「テストコースが海岸近くなので、気象変動が多い、風の影響も大きい、路面の状態(ウエット、氷結、塩類堆積など)の変動も多い。そのため、信頼できる惰行時間を得るまでに日数が多くかかるので認証車持ち込み期日までに完了するのが難しかった」と言い訳しています(注:外気温の変動は理論的な補正式があるので、さすがに「外気温の影響を受ける」とは言っていません)。

 しかし、こうした問題には解決策があります。現にスズキは「他メーカーがやっていることなのだから、わが社もやる」と言って、今回の件の是正措置としてすぐに「それらの影響を少なくする防風壁を設置するなどの工事を実施した」と言っています。最初からそうした工事をしていれば、天文学的な時間をかけて「総和により求めた走行抵抗値」を提出する必要などなかったのです。

 はっきり言って、件の会見は、スズキが国交省対策やマスコミ対応として周到に筋書きを用意し、応酬話法を準備して臨んだように見えます。しかし、技術的におかしい説明なので、国交省は私の情報を基に、スズキに立ち入り検査を実施すべきです。そして、マスコミは国交省が以上の情報を持ち、きちんと立ち入り検査したかどうかをウオッチする必要があります。