PR


エンジンシステムの信頼性保証のために装置を停止する方法について


 一方、自動車メーカーは「あらゆる走行状態でエンジンシステム(排気管途中の触媒などのエンジン周辺システムを含む)にダメージを与えるEGRなどの装置を常時働かせると、エンジンシステムの耐久性を保証できない」と言います。確かにこれは技術的に理解できます。

 従って、韓国当局が示した「一般的な運転条件で排出ガス部品の機能の低下を禁止している任意設定の規定」という文中の「一般的な」というあいまいな表現には問題があり、論争の的になります。そこで、エンジンシステムにダメージを与える可能性がある排出ガス低減装置についての機能低減方法について、私は以下の現実的な提言をします。

「エンジンシステムにダメージを与える装置については、排出ガス測定モードの条件を外れたら外れた量に応じてその機能をエンジンシステムにダメージを与える実害限度まで漸減することを認める」

 ただし、この場合は、装置がエンジンシステムに害を与える程度を示したデータの提出が条件です。加えて、当局はそのデータの妥当性を専門家に鑑定してもらうとともに、メーカーが提出したデータと鑑定結果を国民に完全オープンにし、他メーカーの提出データと比較ができるようにする体制をとることも条件です。こうすることにより、自動車メーカーが変なデータを出せないようにするのです。

 以上の規定を例に基づいて説明します。

・外気温が30℃を超えたらエンジンシステムに害を与える装置が外気温50℃で実害に達するなら、30℃から50℃の間で漸減することは認める(外気温30℃までは規制値0.10g/kmの規制値に適合しているとして外気温50℃では装置を完全停止して2.0g/kmの排出ガスにする必要があるとしたら(そういうことは考えにくいが)、外気温30から50℃までの間で排出ガスが0.10から2.0g/kmまで比例的に増大するような排出ガス対策装置の機能を低減する装置は認める。例えば外気温40℃の時は約1.0g/kmの排出ガスまでは認める。

・走行モードの車速が規定走行モードの車速を超えて走行する場合、車速に応じてエンジンシステムに害を与える装置の機能を実害に達する車速までの間で漸減することは認める。

・走行モードの走行時間が規定走行時間を超えて走行する場合、実害に達する走行時間に応じて装置の働きを漸減することは認める。

・高地を走行する場合、各国の事情に応じた高度までは規制値内に適合させることを条件とする。しかし、その高度を超えた場合は、高度に応じて実害が発生する高度までの間で漸減することは認める。

 以上の規定の重要なポイントは、「ある条件に達したらその時点で装置を完全停止する装置(スイッチング装置)は認めない」ということです。

 実は、1980年代末にトヨタ自動車がディフィートデバイスを装着したことに端を発して、自動車工業会排出ガス試験法分科会(ガソリン車中心)が再発防止基準を設定しました。「排ガス装置を排出ガス測定モード外の条件で完全停止する装置の装着を禁止する」という業界の自主基準です。この自主基準が今でも生きているか否かは定かではありませんが、ディーゼルエンジン車には適用されていないことが分かりました。は、2016年3月3日に国交省が発表した国内ディーゼル車の路上走行における排出ガスの試験結果(「排出ガス路上走行試験等結果取りまとめ(国産自動車)」)です。

図●国交省が発表した国内ディーゼル車の路上走行における排出ガスの試験結果
[画像のクリックで拡大表示]
図●国交省が発表した国内ディーゼル車の路上走行における排出ガスの試験結果

 この資料によると、マツダの「CX-5」と「デミオ」、および三菱自動車の「デリカD5」はスイッチング装置を設けていません。一方、日産自動車の「エクストレイル」と、トヨタ自動車の「ランドクルーザープラド」「ハイエース」の3車種は、排出ガス測定モード「JC08モード」を外れてある走行条件になると、EGRなどの装置を停止するスイッチング装置が装着されています。

 マツダの2車種は、エンジンの改良によりエンジンからの排出ガスそのものを低減しているため、排出ガス測定モードであるJC08モード以外の高速道路走行などでもNOxが規制値内に収まっています(NOxの平均値規制値は0.08g/kmだが1台だけ測定した時の最大値規制値は0.11g/kmなので合格である)。

 デリカはスイッチング装置を設けていないものの、後処理装置でNOx対策を行っているため、エンジンからの排出ガスが多い高速道路走行などでは後処理装置で十分に処理しきれずにNOx量が増えています。しかし、高速道路走行をJC08モードの車速と対比すると一応許容範囲でしょう。スイッチング装置さえ設けていなければ、この程度で収まるということです。

 しかし、日産自動車とトヨタ自動車のスイッチング装置を設けている3車種は、走行状態によっては極端な悪化を呈しています。日産自動車のエクストレイルは、一度停止すると600秒(10分)間は復帰させないようにしています。スイッチング的に排出ガス装置を停止する方法は技術論的にも妥当ではないことは明らかですが、実証的にもダメなことが分かるでしょう。国交省はスイッチング装置を「ディフィートデバイス」とは認知しないので、ガソリン車でも、自工会自主基準がありながらもスイッチング装置を設けているメーカーがあるかもしれません。

* 1980年代末、当時の排出ガス測定モード「10・11モード」において40km/h一定速走行時間が15秒であったため、トヨタ自動車が20秒を超えたら排出ガス低減装置を停止する装置を装着した。この点を指摘された同社のR&D担当役員が「規定モードで規制値を満たしているのだから、何が悪いのか?」と開き直ったところ、全国から猛烈な反発を受けた。そのため、2日後に同社が同役員を更迭して収めたという事件(参考記事)。