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──では、グローバル開発購買がうまくいっていない経営視点での原因とは何でしょうか。

古澤氏:経営視点での原因は、ものづくりの現場(設計開発部門や生産部門)と経営部門のコミュニケーションがうまく図れていないことです。経営部門が立てる将来の収益計画に対し、ものづくりの現場が挙げるコスト削減のアイデアがきちんとひもづいていないのです。そのため、ものづくりの現場が考えているコスト削減のアイデアを全て実行したとしても、それによって収益計画に達するか否かが経営部門で分からない。つまり、グローバルでは、どの製品の販売計画に対し、どのコスト削減のアイデアが割り当てられるかをきちんと把握できないのです。

 例えば、自動車部品メーカーの販売計画。ある車種に対し、自動車部品Xを日本で生産しているとします。このままコスト削減のアイデアを実行しなければ、この自動車部品メーカーが自動車メーカーに販売する単価が下がり、利益が減ってしまいます。通常、自動車メーカーは年々価格の引き下げを要求するからです。これに対し、コスト削減のアイデアを適用すれば、利益が上がって販売計画の目標に近づけることができます。

 ところが、グローバル開発購買になったとたんに、経営部門はどの車種にコスト削減のアイデアが利いてくるかを把握できなくなる。そのため、ものづくりの現場がコスト削減の施策をたくさん持っていたとしても、それがどの車種にいつ織り込めるかが分からない。日本でならできるのに、グローバルになると収益計画を立てられないのです。


──技術者が頑張って創出したコスト削減のアイデアが海外では生かしにくいというのはもったいないし、残念です。なぜ、そうした状況になっているのでしょうか。

古澤氏:実は、グローバル全体で今現在のコストの実力値、すなわち製品別の原価の「見える化」を実現できている日本企業が限られているからです。それが見えていれば、ある程度統制がとれるのですが…。

 例えばコストの実力値が100円であるのに対し、半年後に90円にするという計画を立てて、結果が95円だったときに、その原因が探れない。なぜなら、ものづくりの現場が見えておらず、原価が分かっていないからです。

 日本工場でキーデバイスを造り、海外工場で製品を組み立てるとします。すると、それぞれの原価は分かるけれど、利益は工場間で乗っていくので、原価が分からない。工場間利益を取り除いた利益が見える必要があるけれど、見えていない。下手をすると、安く売っている場合もある。最終工場では本当は高い原価かもしれないけれど、政策的に安く仕入れているケースもある。すると、実際には儲からないという事態も起きる。つまり、製品別の原価が見えないと、どの顧客や事業が儲かっているかいないかが分からないのです。

 結局、ものづくり現場と経営のコミュニケーション不足が問題です。現場の実力値が分からない。それ故に、経営に対するインパクトが分からず、トップがアクションを起こせない。こうした状況は今のうちに立て直しておかないと、今後はサプライヤーへの単純な値下げ交渉しかできなくなってしまう恐れがあります。

 今、グローバル化は加速しており、生産量が増えて大変になっている。そのため、グローバルで連携する必要がある開発購買はうまくできていない。しかし、現時点であれば、とりあえず事業は回る。拠点完結のコスト削減、すなわち値引き交渉だけはできるからです。しかし、コスト削減のアイデアを設計に織り込むことは難しい。このままいくと、収益はどんどん悪化していくことになりかねません。