PR

──公差設計は大切な基本のはずなのに、習得している人が少ないというのはなぜなのでしょうか。

栗山氏:設計者であれば、「公差設計はできて当たり前」という意識があるのだと思います。そのため、「恥ずかしくて、できないとは言えない」という雰囲気が日本企業にはあるのではないでしょうか。また、「そんなことは知っている」という人も少なくないと思います。しかし、きちんと習得している人はお世辞にも多くはないというのが正直なところです。

 身の回りの製品で確かめてみてください。例えば、私が購入した有名企業のノートパソコンでは、プロジェクターなどに映像信号を伝送するためのVGA端子で明らかに公差設計が原因である品質不具合がありました。このVGA端子は基板実装タイプ。筐体に設けたVGA端子用の開口部(貫通穴)に対し、適切な位置決めが必要となります。配置はちょうど「回」という漢字の外側の「口」が筐体で、内側の「口」がVGA端子となります。

 私が購入したノートPCでは、VGA端子が筐体に対して片側に完全に寄っていました。そのため、ケースとの隙間がなくなってプロジェクターからのケーブル端子をパソコンのVGA端子に差し込むことができませんでした。これは、「ガタ」と「レバー比」をきちんと計算しないまま図面を作成し、ねじ締めで失敗してしまった典型例です。

 ちなみに、私は彫刻刀で樹脂製の筐体を削ってなんとかVGAケーブル端子を差し込めるようにしました(注:結構奥の方が深くて苦労しました)。修理に出す時間がなかったからです。これは明らかに私のパソコンだけに発生した問題ではなく、市場クレームとして顕在化しているはずです。大量の修理もしくは交換をユーザーから要求されたことでしょう。その証拠に、このパソコンの次機種はVGA端子を外付けタイプに変更していました。しかし、外付けタイプのVGA端子は非常に高額で、筐体へのねじ固定および回路基板との電気接続のために内側にもコネクタがさらに必要になるなどの大幅なコストアップとなります。もちろん、コストに余裕のある製品はその方法でもよいかもしれませんが。

 一方で、公差設計により基板実装タイプで頑張っているパソコンも現存しています。公差設計ができない設計者は、安易な方法で逃げる(大幅コストアップ)しかありません。こうした事例は珍しくありません。市場でのクレームになる前に、もう一度、公差設計と幾何公差を効果的に使いこなせているかどうかを確認することが大切です。

 なお、技術者塾の講座では、電気接続用コネクタの接触不良事例などについても紹介します。