ワイヤレス制御回路でモーターを遠隔操作
──では、演習はどのような内容なのでしょうか。
両氏: IoT化を踏まえた演習を行います。具体的には、温度を検出し、通信して、モーターを回す演習です。まず、モーター駆動回路を組み立て、電子回路の基本を体感してもらいます(図1)。これは、回転数の違いでLEDが光る仕組みも取り入れた回路です。
モーター駆動回路を組み立てたら、講師が用意するモーターの回転数を制御する回路につなげます(図2)。この回路には温度センサーが付いており、温度変化によってモーターの回転数を3段階に切り替えます。
最後に、IoTを踏まえてモーターの遠隔制御の演習を行います。ここでは講師がワイヤレス制御回路を用意します(図3)。このワイヤレス制御回路には、2.4GHzでデジタル信号を送受信できる無線モジュール「XBee」が実装されています。子機(ルーター)と親機(コーディネーター)があり、子機にはサーミスターという温度センサーが付いています。一方、親機にはマイコン「Arduino」が実装されており、ここに先のモーター駆動回路をつなぎます。
子機は常に温度を監視しており、XBeeの送信機を介してデジタル信号を親機側に送信し続けます。そして、温度がある設定温度を超えると、Arduinoがそのデジタル信号を処理し、モーター駆動回路に信号を送ります。すると、その信号に基づいてモーター駆動回路がモーターに電流を流し、モーターを回転させるという仕組みです。センサーの付いた子機と、モーター駆動回路をつなげた親機をそれぞれ別の生産設備に付けることで、工場で使うIoTシステムの基礎を学ぶことができます。
XBeeには省電力で安価という利点があります。音声データや画像データの送受信は無理ですが、温度データのような、あまりスピードの速くないアナログデータの送受信によく使います。IoTに対応した工場でもたくさん使用されることでしょう。
なお、このXBeeを実装したワイヤレス制御回路は、回路を組み立てた後で、無線通信を可能にするためのセットアップが必要です。XBeeに必要なファームウエア(OSのようなもの)をインストールしなければならないのです。具体的には、USBケーブルを使ってXBeeをパソコン(PC)のUSBポートにつないだ後、インターネットを介して、XBeeにファームウエアをインストールするソフトウエアをPCにダウンロードします。このソフトの中に一連のファームウエアが入っており、そのうちの一部をXBeeに組み込まれたマイコンである「ARM」にインストールして子機と親機の間で無線通信ができるようにするのです。時間の制約から、これは講師の方で用意します。
こうした作業はエレクトロニクス系技術者にとっては常識ですが、機械系技術者の中にはあまり知らない人もいます。これも機械系技術者とエレクトロニクス系技術者との間の共通言語の1つと言えるでしょう。講義と演習を通じて、ぜひ、こうした共通言語を理解し、かつ体感してもらいたいと思います。