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──設計品質基礎講座を、今、なぜ学ぶべきなのでしょうか。成果を上げた事例があれば教えてください。

戸水氏:製品開発プロセス全体の品質管理をカバーする統合的な開発ツールを開発した米国SDI社は、2000年から欧米を中心に設計品質基礎講座を実施してきました。そのコンテンツを基に、SDI Japanは2012年にソニー向けに「設計品質基礎講座e-Learning」の開発を行いました。

 当時、ソニーでは、電子デバイス製品の経営が厳しく、リストラ以外の根本的対策を模索されていた時期でした。特に、目先のイノベーティブな具体案件を探し回るよりも先に、新しいものづくりの方法や人材群を企業内に再構築しなければならない時期に来ていると感じていたのです。

 技術者塾で開催する設計品質基礎講座はソニーで使用した社内教育のモチーフや教材とは若干異なるものの、基本的な考え方は同じです。ソニーの「設計品質基礎講座e-Learning」は、2015年度までにソニー社内の4000人を越える技術者が受講登録を行い、多くの方から好評を得ました。そして、2014年度には「日本e-Learning大賞」のベストプラクティス賞を受賞し、設計品質基礎講座の存在がソニーの社内外で認知されるようになりました。

 設計品質基礎講座を学ぶことにより、より科学的な製品開発の方法論を修得し、そこから次代のイノベーションが生み出されていくと私は確信しています。

──設計品質基礎講座は、今後ますます必要とされるのでしょうか。

戸水氏:近年、日本メーカーでは社外に製造を委託するOEM(Original Equipment Manufacturing)や、設計の一部までを含めて委託するODM (Original Design Manufacturing) といわれるビジネスモデルへの移行が顕著になっています。特に、製品原価に占める材料や電子部品の割合が高い電機・電子機器メーカーは、日本国内での製造や部品調達に耐えられなくなったことから、海外のEMS (Electronics Manufacturing Service:電子機器受託生産サービス)企業に製造を移してしまった企業が多いように見受けられます。

 その結果、多くの製品で設計のコモディティー(陳腐)化が進み、部品が共通化されました。部品さえ調達することができれば、世界中の多くの企業が製品を製造できるようになったのです。これにより、世界的なコスト競争がスタートし、多くの日本メーカーを苦しめるようになりました。

 日本メーカーの中で製品に独自性がない場合は、欧米のリーディング企業に大差をつけられ、新興国の企業にも追い抜かれてしまいました。かつて世界市場を席巻した日本の白物家電や液晶テレビ、パソコン、携帯電話機、半導体メモリーなどは、ことごとく競争力を失っていったのです。

 そこで、こうした閉塞感を打ち破るためには、製品開発プロセスを改革しなければならないと日本の製造業の中で指摘されるようになりました。特に、開発段階において効率良く魅力的な設計品質を作り込む手法を確立することこそが、日本メーカーにとって復活の課題となりました。

 現状では、多くの日本メーカーが製品の品質を製造段階で作り込んでいます。製品開発プロセスの改革とは、すなわち、製品の品質を設計段階で作り込むように変えることを意味します。日本メーカーにとっては大きな変革です。米Apple社や米Dell社と同様に、世界中から部品を調達できる完全な製品仕様書を最初に作ることが求められるからです。

 これまで日本メーカーでは、設計情報が完璧ではなくても製造部門が設計の意図をくみ取り、いわゆる「擦り合わせ」で製品を造ってくれました。しかし、今後は製品を造る前に、より完全な製品仕様書を作り上げた方が世界の競争に勝つと考えられます。

 設計品質基礎講座は、製品開発に関わる全ての人が、より完全で魅力的な設計品質を実現し、勝つための基礎的手法を修得することを目的としています。こうしたニーズは今後も日本メーカーの中で高まっていくはずです。