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「二刀流」が優秀なエンジニアの条件

──Google社のマネジメントでトヨタ自動車のマネジメントと共通する点を教えてください。

高木氏:例えば、エンジニアの定義です。Google社はエンジニアに技術力に加えてマネジメント力を求めます。同社のエンジニアは優秀なプログラマーやシステムデザイナーで、卓越した技術知識を備えています。しかし、それだけではありません。マネジメントにも詳しく、経営的な発想力にも優れている人が多いと言われています。

 これは、トヨタ自動車のマネジメントを見て私が名付けた「天秤の原理」と似ています。技術力とマネジメント力を天秤にかけた絵をイメージしてください。ここで、マネジメント力が低下すると、技術力を押し上げる力が弱ります。すると、技術力が弱くなって、両方の力が小さくなった状態で均衡を取ろうとします。当然、中にいる人達から見るとバランスが取れているので何も問題はないように見えます。しかし、企業の競争力は低下します。この状態から脱却するには、マネジメント力を強化することが必要です。マネジメント力を高めることで、技術力が押し上がってくるからです。こうして両方の力を高めて、企業の競争力を引き上げていく。トヨタ自動車で優秀なエンジニアにはこれが求められています。

 また、先にも触れましたが、Google社は従来型のMBAスタイルの経営に背を向けています。あるとき、従来型のMBAスタイルに基づく事業計画を求められたトップは、Google社に形式的で厳格な事業計画を押し付けても、適合しない臓器移植を受けた患者のように拒絶反応を起こすと語っています。それまで米国企業では常識とされていた経営を、市場に素早く連動して自律的に動くマネジメントに変えていったのです。

 これも、常に「身の丈」(自社の実力水準や置かれた環境など)を把握しながら、変化し続けることに対応した経営スタイルを取っているトヨタ自動車のマネジメントと一致します。同社には「大部屋」方式があります。変化に対応するには、さまざまな人の知見を結集させることが必要です。しかも、できる限り早く対応するなら、すぐに議論ができるようにエンジニアや管理者、監督者、経営者が同じ視線で議論し、意思決定を素早く行うことが大切になる。変化に素早く対応するマネジメントを貫くために、トヨタ自動車は大部屋という仕事の仕方にこだわっているのです。

 驚いたのは、Google社からドラッカーの名前が出てきたこと。ドラッカーは日本では有名ですが、米国では評価が分かれるからです。ドラッカーは人を重視し、現場の声を聞くことを求めました。これに対し、かつて米国の大手自動車メーカーのトップが、経営を決めるのは我々だ。現場の声が経営を決めるわけではない。それは越権行為だとドラッカーに反論したと伝えられています。

 この、人と現場を重視する点も、トヨタ自動車の「人間性尊重」や「現地・現物」を大切にする考えと一致しています。例えば、PDCAサイクルもトヨタ自動車では現場が回します。欧米企業では経営陣やマネージャーがP(Plan)し、現場はD(Do)だけを行い、C(Check)、A(Action)をマネージャーが行うことが多いのは、皆さんも知っていることだと思います。日本のマネジメントも欧米の影響を受けてほぼこのパターンに陥っています。