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「トヨタ品質」に必要不可欠

──品質手法はどれくらいあるのでしょうか。

皆川氏:品質手法は世の中に50はあると言われています。

──そんなにあるのですか? それらを全て習得しなければならないのでしょうか。

皆川氏:実は、トヨタグループで重視している必須の品質手法は、分類の仕方や数え方にもよりますが17手法ほどです。[1]QCストーリー、[2]KPT(Keep、Problem、Try)、[3]自工程完結、[4]新製品流動管理システム、[5]重点管理、[6]設計審査(DR)、[7]品質保証会議(次工程移行可否判定会議)、[8]品質機能展開(QFD)、[9]QC七つ道具・新QC七つ道具、[10]多変量解析、[11]実験計画法、[12]設計FMEA、[13]工程FMEA、[14]FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)、[15]信頼性設計・信頼性試験、[16]QAネットワーク、[17]なぜなぜ分析、です。

 これらは「トヨタ品質」を満たすために最低限必要なものです。抜けがあるとトヨタグループでは品質づくりはできません。これらの17の品質手法をトヨタグループの設計者なら当然習得します。知らなければ、トヨタグループでは設計者と呼ぶことはできないと言っても過言ではありません。

──しかし、それらの品質手法を知らなくても製品は出来ています。

皆川氏:これらの品質手法を知らなくても、とりあえず物は造れます。例えば、シャフト部品であれば寸法や公差、質量、材質、面粗度などを指示すれば出来てくる。しかし、品質手法を知らなければ、クレームになる可能性を排除できません。

 なぜかと言えば、詰まるところ「お客様の満足が得られない」からです。「品質をつくりこむ」とは、お客様に満足してもらうようにつくりこむことです。しかも、製品によっては1年やそこらではなく、5年、10年とお客様に満足していただかなければならない。

 お客様は物が欲しいわけではありません。機能が欲しいのです。従って、先の寸法や質量、材質などは、この機能を実現するものでなければなりません。それらが機能を満足しているか否かは、品質機能展開(QFD)を実施しないと判断できないのです。例えば、「持ちやすい」という機能を満たすために、どのような寸法や質量、材質にするかを品質機能展開(QFD)を使って割り出すのです。

 ところが、品質機能展開(QFD)を使わずに、いきなり寸法や質量、材質などを決めてしまい、それを「設計」と呼んでいる日本企業が実に多いのです。部品メーカーだけではありません。最終製品を造っている企業でも目立ちます。これでは何も考えずに、思いつきや勘だけで設計してしまうことと変わりません。

 分かりやすい例を出しましょう。コップを設計するとします。すると、多くの設計者がいきなり容量や寸法などを決めてコップの形状を描いてしまいます。そうではなく、まずはお客様がどのような状況で使うかを考えるところからスタートしなければならないのです。それをせずに図面を描くことは、漫画を描いていることと同じです。寸法も容量も無限に存在します。根拠なく決めて、それが適正と言えるのでしょうか。

 多いのが、既存の図面の流用です。既にある図面を基に、例えば少し寸法を大きくする。どうして大きくしたのかと聞くと、「いや、容量が大きくなれば良いかと思って」といった言葉が返ってくる。しかし、容量が大きくなるとお客様の満足が得られるかどうかの根拠はありません。容量が大きくなって重くなったら、使い勝手が悪くなってお客様は不快に思うかもしれない。ある企業で機能部品の設計者に、どのように寸法や公差を決めているのですかと質問したところ、「前モデルの図面を見て、なんとなく決めています」と言っていました。

 これに対し、トヨタグループでは品質機能展開(QFD)を使い、「誰がどのように使うかを考えた上で、どのような機能が必要かを判断する。そして、その機能を満たすことができる寸法や公差、質量、材質、面粗度などを具体的に決めていく」のです。