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「思いつきのものづくり」

──なるほど。ただ、それでもまだ疑問が残ります。品質手法をあまり使っていないのに、品質が評価されている日本企業の製品が多いのはなぜでしょうか。

皆川氏:試行錯誤の世界だと考えられます。とりあえず造ってみる。ダメだった。改善する。ダメだった。改善する…。これを繰り返しているのでしょう。こうした方法でも、時間と費用をかけ、改善の方向性が合っていれば、ある程度の水準までは品質が高まるかもしれません。

 でも、トヨタグループの設計者がこんな取り組みをしていたら、上司から一喝されてしまいます。ムダが多い上に、目標とする水準にたどり着けないかもしれないからです。まず、時間と費用がいくらかかるか分かりません。おまけに、改善の方向が目指すべき品質向上の方向と合致していない可能性まであるのです。

 本来は目標とする品質のゴールに向かってまっすぐ進むべきです。ところが、試行錯誤の方法は「思いつきのものづくり」。改善も思いつきです。思いつきで改善すると、少しずつ間違った方向に進んでしまう危険性があります。しかも、間違っていることに気が付かない。気付いたときには、赤色の製品を造るはずが青色の製品が出来てしまったというくらいの開きが生じてもおかしくないのです。思いつきで設計しても、時にはヒットすることがあるかもしれません。しかし、そのヒットは偶然あって確率は低く、時間も費用もかかるかもしれない。何より永続性はない。

 こうした「思いつきのものづくり」や「思いつきの改善」をしないために、トヨタグループでは先の17の品質手法を習得するのです。そして、その根底に押さえているのが「品質とは何か」に対する答え(注:お客様満足度)というわけです。これを間違えると、お客様が全く望んでいない頓珍漢(とんちんかん)な製品を造ってしまう恐れがあります。

 にもかかわらず、お客様のことを考えずに「こんな製品を造ってみました。使ってみてください」と言う日本企業が増えています。お客様のニーズを考えずに、価格を維持するために付加機能を付けた。それを買ってください、と。