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──品質とは何か、ですか? 製造業はもちろん、日本企業で働く社員であれば誰でも知っていることではないでしょうか。私なら「不良品を出さないこと」と答えます。

皆川氏:それが意外と答えられないのです。技術者も例外ではありません。これまでに私が技術者に対して質問して得た回答は、「公差を守ること」「ものの出来の良さ」「材料のばらつきの少なさ」「不良品を出さないこと」といったものです。あなたの回答もそうですね。確かにこれらも品質の一部でしょう。しかし、どれも「もの(製品)」しか見ていません。正解は講座内で披露しますが、「何のために品質をつくりこむのか?」という視点で考えれば、自ずと正解にたどり着けると思います。

 

──私も人のことは言えませんが、なぜ技術者であっても回答がばらつくのでしょうか。

皆川氏:皆さんがそれぞれ仕事において直接経験したことの中から答えるためでしょう。

 

──品質の定義がはっきりしていないということでしょうか?

皆川氏:そう言えると思います。正しくは、品質の定義をしっかりしている企業と、そうではない企業があるということになるでしょうか。

 先ほど品質をつくりこむ際に「何のためか?」という視点が大切と述べましたが、もっと言えば、品質を定義する際に「お客様はどなたか?」を考えてほしいと思います。製品を購入してくれるエンドユーザーがお客様であるのは当然ですが、それだけではありません。自分の仕事が影響を与える人は全てお客様です。

 例えば、設計者にとっては、製造部門の社員もサービス部門の社員もお客様になり得ます。設計者が出図したら、その図面の影響を彼らが受けるからです。図面を受け取った人の立場になってみれば納得がいくはず。読みやすい図面になっているか否か、メンテナンスしやすい図面になっているか否かで図面の品質の善し悪しを容易に判断できることでしょう。

 それでも、直接ものづくりに携わっている技術者や社員はましな方でしょう。総務部門や人事部門、システム部門など機能部門と呼ばれるところは、お客様がどなたかなどあまり考えずに仕事を進めてしまうケースが目立ちます。皆さんの会社でも、「このたび社内システムを構築しました。何月何日から設計者は全員これを使ってください」といった通達がありませんか。システム部門にとってシステムを使う設計者はお客様であるべきなのに、一方的に押し付けて終わりというのではお客様志向とはとても呼べません。こうなるのは結局、自分に火の粉が降りかかってこないからでしょう。自分の責任は問われることなくやり過ごせるので、品質とは何かを考えずに済むというわけです。

 トヨタグループが研修において真っ先に品質の定義を取り上げるのは、ここを間違うと誤った品質を求めてしまうからです。ひどい例としてよくあるのが、「お客様が上司」であるかのような姿勢や行動です。