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──最近起きた品質トラブルの事例で、皆川先生が気になったものを教えてください。

皆川氏:会社ではなく国の事例なのですが、最近とても驚いたのが新国立競技場のニュースです。ご存じの通り、新国立競技場は2020年に開催される東京オリンピックのメインスタジアムになる予定なのですが、なんと聖火台を設置する場所がないと報じられました。この報道を知って、果たして国は品質管理を行っているのだろうかと疑問に感じました。

 きちんとした会社なら、設計する際に、例えばFMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)〔トヨタグループであれば「DRBFM(Design Review Based on Failure Mode)」〕を実施してトラブルの発生を未然に防ごうとします。FMEAを活用し、どのような機能が必要かをきちんと押さえて、欠損した場合の不具合の影響を考慮する。その上で、不具合の発生を防ぐための設計となっているかどうかを審査(DR)します。

 こうした仕組みが出来ていれば、聖火台がないなどということは設計段階においてすぐに分かるはずなのです。それなのに、こうした初歩的なミスを含む設計が通ってしまうなんて、この競技場の設計に関する品質管理の仕組みは一体どうなっているのだろうかと大変疑問に思ったのです。

 このトラブルは、単に聖火台の設置スペースを忘れていたという個別の不具合の問題では済まされません。より重大な問題は、こうした不具合を未然に防ぐための「仕組み」がきちんと用意されていない可能性があることなのです。聖火台の設置スペースは東京オリンピックの開催日までには用意されることでしょう。しかし、設計ミスを防ぐ仕組みがきちんと整っていないとしたら、他の不具合が今後発生する可能性を否定することはできません。

 こうした報道のたびに思うのですが、記者ももっと勉強すべきです。何かトラブルが発生した時に、そのトラブルの直接的な原因ばかり質問し、その根本的な原因にまで突っ込んで聞く記者が少ないからです。直接原因を知って終わらせるのではなく、その直接原因がなぜ生じたかについても突っ込んで聞き、その後は他のトラブルの発生も未然に防ぐ仕組みを構築したかどうかについても追究すべきです。