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──私もこれまでの取材などから、ねじはトルク法で管理すればよいのだと誤解していました。ただ、トルク法で管理する方法では、何が問題なのでしょうか。

岡本氏:例えば、最近のエンジンやエンジン周辺に設置する車載部品には、かなり精度の高い締め付け軸力の管理が要求されています。ここでは従来のトルク法から、「角度法」に切り替わりつつあります。角度法は軸力の精度を管理しやすい方法だからです。

 ねじの締結についてきちんと分かっている技術者は、こうした部分に角度法を正しく採用することができます。しかし、そうでなければ、何の疑いもなく従来のトルク法を使用し、後になってねじの緩みや破損といったトラブルに悩まされることになりかねません。

 問題は、ねじ締結の原理・原則をしっかりと習得していないために、適材適所の方法を使い分けられないことです。トルク法が間違っているわけではありません。トルク法が使える場面はたくさんありますし、生産性が高いという利点もある。軸力を高精度で管理できるからといって、全ての締結に角度法を使えば、コスト的にも労力的にも過大になってしまいます。要は、見極めが大切なのです。そのためには、ねじ締結の原理・原則をしっかりと抑えなければならないというわけです。

──しかし、ねじ締結は設計の基本的な項目です。それなのに、習得している技術者が少ないというのは不思議に感じます。

岡本氏:例えば、トルク法とはどのようなものか、角度法とは何か、といったことについては学んでいるかもしれません。ところが、トルクと軸力のばらつきの原因にまでは踏み込んでいない場合が多いと思います。これは、設計における留意点です。つまり、設計における留意点までを学んでいる技術者が少ないということです。

 トルク法では、トルクと軸力の相関がとられており、必要な軸力の範囲を決めると、その軸力の範囲を満足するトルクの範囲で管理しながらねじを締結します。先の通り、多くの企業の設計基準はここで終わりです。ところが、ここではばらつきを考慮していません。

 ばらつきを生む大きな要因の1つに「摩擦」があります。例えば、ねじを締結する際に摩擦により焼き付いたとすれば、トルクをガンガン加えても、軸力が上がることはありません。同じねじでも、表面処理がされているか否かで、摩擦力は変わってきます。切削油がねじに付着しているか否かでも、摩擦力は変化するのです。ねじの表面を拭かずに締結すれば、せっかくトルク法で管理してもトラブルは防げません。ねじを回すスピードも高速か低速かで摩擦係数が変化します。

 ねじ締結でトラブルを防ぐためには、こうした原理・原則までしっかりと学んでおかなければならないのです。「技術者塾」の講座(「決定版!トラブルを回避する自動車部品のねじ締め」)のプログラムの中に、ねじの摩擦係数がどのように決まるか(摩擦のメカニズム)まで加えているのは、こうした理由からです。

 なお、「自動車部品」と銘打っていますが、それは比較的振動が大きくてねじ締結のトラブルが目立つ製品だからです。本講座は自動車分野だけではなく、ねじ締結のトラブルを未然に防ぎたいあらゆる分野の技術者に役立つと思います。