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──DRBFMでは設計の根拠について議論できるワークシートになっているのですね。具体的にはどのようになっているのでしょうか。

皆川氏:まず、「変更点・変化点」欄があります。例えば、燃料噴射システムであれば、ここに燃料の噴射圧力を100MPaから200MPaに高めたといった変更点を記載します。仕向地(販売する市場)が変わった場合や製品を使う環境が変わった場合は、変化点として、やはりこの欄に記載します。

 次に「目的」欄があります。ここには何のために変えたのかを記述します。続いて「役割」欄。ここには、例えば「燃料の圧力の役割は何か」について記載します。

 次に「心配点」欄。ここには、噴射圧力を200MPaに高めた際に心配となる点を書き込みます。例えば、圧力が高すぎて燃料が漏れる危険性があるといったことを記すのです。続いて、「要因」欄。ここには、仮に燃料が漏れるとしたら、その原因を記載します。例えば、材料のつなぎ目の面粗度が悪くて燃料が漏れてしまうといったことです。

 次に「影響」欄があります。例えば、燃料が漏れることで発火や引火といった重大な影響を及ぼすことを記載します。

 そして、「設計」欄。ここが最も大切な所です。どのように設計したのかについて記載します。燃料を漏らさないためにどのような設計を施したかを書き記します。例えば、面粗度を高めることにより、燃料の漏れの安全率である「漏れ限界」を500MPaまで引き上げた。これで安全率が5倍になったので燃料漏れを回避できる、といった具合です。

 最後に「評価」欄があります。本当にその設計で大丈夫かどうかを評価する欄です。燃料の漏れに対して、どのような評価をしたかを記載します。例えば、漏れ限界を1GPaまで高めて評価したことや、常温だけではなく、高温環境や長時間放置した耐久試験などを行って評価したことを書き記すのです。

 以上の欄は、設計者が埋めてDRBFMのワークシートを作成します。そして、DRではこのワークシートを基に、まずは設計者が出席者である製造、生産技術、品質保証、検査の各部門の人たちに説明します。その後、議論に入ります。

 すると、例えば「心配点は燃料漏れ以外にないのですか?」といった質問が上がる。製造からは「そんなに面粗度を上げてしまうとコストが跳ね上がり、加工時間も伸びてしまう」といった意見が出てくる。品質保証からは「要因として面粗度だけを挙げていますが、これほど高圧になると、材質の巣(す)の影響は考えられませんか?」と心配する声が上がる。影響欄に関して「圧力を高くするとポンプの負荷が高くなり、カムの摩耗が激しくなるのでは?」という質問が設計者に投げ掛けられる──。このように、設計者だけでは気付かない、それぞれの専門の立場の知見を利用して、設計の改良点に気付くことができる。これが、みんなで議論することの意義なのです。

 さらに、DRBFMではこうした議論を受けて、設計の改善を実現する仕組みも組み込んでいます。「設計へ反映すべき事項」「評価へ反映すべき事項」「製造へ反映すべき事項」を記す欄があるからです。例えば、巣の影響があるかどうかは「評価へ反映すべき事項」に記入し面粗度に関して製造側の問題であれば、「製造へ反映すべき事項」に製造の工程能力を定量的に調査することを記します。「担当」と「期限」を書く欄もあるため、いつまでに誰が担当するかをその場で決めることができます。こうして、次のDRでどのような結果になったかを確かめます。

 DRBFMでは、全ての変更点・変化点と、それらによって考えられる全ての心配について議論しなければなりません。だから、漏れなく抜けなく議論できるというわけです。

──トヨタグループにおけるDRBFMの位置づけを教えてください。

皆川氏:必須のツールです。新製品の場合はトヨタ自動車と一緒に部品メーカーもDRBFMを実践することになります。ストレングス(強み)を知っている部品メーカーと、ストレス(負荷)を知っている自動車メーカー、すなわち、製品の強度を良く知る部品メーカーと、その製品(部品)に関してどのような負荷が加わるかを把握している自動車メーカーが一緒にDRBFMを実践すると、より大きな効果を得られるからです。

 逆に言えば、DRBFMを知らなければトヨタグループとは一緒に仕事ができないとも言えると思います。

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(12)12月14日(水)
「トヨタの不良品流出防止法『QAネットワーク』――製造工程を想定し、演習しながら理解する」