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「悪漢」を経営者にするな

 では、「正しさ」とビジネスはどう関わってくるのだろうか。

 繰り返して述べてきたように、ビジネスの「本質」とは、顧客価値を創造することである。そして、顧客価値を創造するためには、顧客をはじめとするステークホルダー、事業環境、技術、業務、仕組みなど、数多の事物についての「真実」を把握することが欠かせない。

 また、顧客価値の創造とは、顧客集団の全員にとっての対価を伴う「価値」を発生させる考えを生み出すことである。よって、ビジネスとは「正義」を生み出すことであることになる。

 ならば、本来、ビジネスマンには、「真実」と「正義」を求める姿勢が要求されることになる。だから、ビジネスマンは、「普遍的」な「正しさ」を求める者でなければならない。特に経営者は、「正義」を求める者、すなわち「正義漢」でなくてはならない。「真実」を求めることは、ある程度参謀に任せても構わない。

 ところが、お金を得るだけなら、「普遍的」な「正しさ」のない考えでもできる。不正や犯罪のような「偽」や「誤り」である考えや、投機(≠投資)のような自分にとってだけの「個別的」な「正しさ」しかない考えでもできる。しかも、しばしば効率良く、である。そのせいか、あくまでも「価値」という「正しさ」の対価であるお金を得るビジネスにおいても、お金を得ることに目を奪われて「正しさ」をないがしろにする経営者が出てきてしまう。結果、企業は凋落の道を辿る。

 我々は、ビジネスとは「真実」と「正義」の振る舞いであることを忘れてはならない。「悪漢」、すなわち「正義漢」ではない者を経営者にしてはならない。