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アナログ回路の設計技術が大きく変わりつつある。IoT(Internet of Things)市場の立ち上がりによって、アナログ回路製品に求められる要件が変わってきたからだ。日経BP社は「アナログ回路シミュレーションを生かす、FETモデリングのコツ」と題したセミナーを、技術者塾として2016年3月24日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める群馬大学大学院 理工学府電子情報部門 客員教授/モーデック 最高顧問の青木均氏に、FETモデリングのポイントなどについて聞いた。前編では、今回のセミナーの見どころを中心に紹介した(前編の記事)。後編では、回路シミュレーション分野における最近の注目点や、今後の市場要求に対応するために必要なことについて語ってもらった。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――回路シミュレーションの最近の注目点は。

 国際学会や文献などの調査を踏まえて、この1年で特に着目されてきたトピックスを挙げると、(1)回路上での熱効果のシミュレーション技術、(2)信頼性シミュレーションの2つだと思います。前者については、デバイス単体におけるものと、回路素子相互におけるものに分けられます。なお、デバイス構造に依存したMOSFETの自己発熱現象については、私も2015年9月のIEEE Transaction on Electron Devicesに発表しました。素子間の相互発熱を精度良くシミュレーションする手法については、幾つかの研究が進められていますが、依然として課題です.

――回路シミュレーションにおいて、今後の市場要求に対応するために必要なことを、教えてください。

 回路シミュレーションを高速・高精度に実行できるかどうかは、回路シミュレーターのユーザーが変更可能な部分をいかに実現するかで決まります。回路シミュレーターはEDAベンダーによって、この先の技術動向やニーズに基づいてアップデートされていきます。シミュレーションエンジンや機能については、ユーザーは変更できません。ユーザーが変更できるのは、機能や設定の選択などを除けば、モデルになります。とはいえ、コンパクトモデルはコード化されているので変更できません。

 ですが、基本回路エレメントを組み合わせてサブ回路化したマクロモデル開発やシミュレーターによっては、ユーザーが関数を記述してモデル化することができます。このような作業には学習が必要ですが、可能です。

 もっと手軽にできることとしては、モデルパラメーターの見直しがあります。デバイスの測定結果とシミュレーション特性について、モデルパラメーターを理解していれば、シミュレーション精度を向上できます。また、モデル式におけるモデルパラメーターの使われ方を理解することで、幾つかのモデルパラメーターについての正しいコンビネーションが分かり、収束性能を上げることが可能となります。

 回路シミュレーターに関する基礎事項、特に使用するトランジスタのモデルやパラメーターを理解し、シミュレーション結果にどのように影響するかが分かっていれば、回路の基幹要素であるトランジスタのシミュレーション精度や、収束時間を長くしている原因が検証できます。キーとなるパラメーターを修正することで、シミュレーション精度が上がり、試作回数が減少できます。

 以上のことは,この先の動向、および今後のニーズに対応していく上でも,ユーザーが実行できる“不変のテクニック”となります。

――ボードシミュレーションが変わりつつあると聞きます。

 ボードにおけるシミュレーションで、米Intel社を中心に使用されてきたIBISモデルから、SPICEモデルに移行していく話があると聞きます。IBISモデルの品質向上が一向に進まない、つまり実測との精度向上が困難であることなどが理由です。今後、SPICEシミュレーションはボード設計でも多く使用されるかもしれません.一方、特に海外で、高集積化・高速化のためのナノデバイスモデル開発やシミュレーションエンジン開発が行われてきましたが、こちらは以前に比べると一段落した感があります。