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高速インタフェース規格が次々と登場し、EMIやシグナル・インテグリティの問題など、機器設計上の課題は増える一方である。日経エレクトロニクスでは以前、高速インタフェース設計の勘所について、さまざまな高速インタフェースの認証試験を手掛けているアリオンの大原稔氏に解説してもらった。今回、2011年4月18日号に掲載した「規格認証試験に潜むリスク、互換性確保がカギに」の内容を3回にわたって紹介する。(2016年2月29日まで、期間限定で特別に無料公開する)

前回から続く

 ここまでは開発サイクルで設計リスクを論じたが、実際の規格では規格の仕様更新や次世代仕様の策定があるので、状況はもっと複雑になる。今回はUSBインタフェースを例にして、従来仕様と、その従来仕様と互換性のある、いわゆる下位互換を可能にした新仕様が登場した場合を考える。

 USBは2000年に「2.0」が、2008年に「3.0」が標準化された。USB 2.0は、前述した開発サイクルで見ると拡大期や普及期を過ぎ、現在は終期に来ている(図4)。一方、USB 3.0は2009年末に対応製品が登場したばかりで、2011年春の段階では開発サイクルの初期に当たる。

図4 下位互換でリスクが高まる
図4 下位互換でリスクが高まる
USB 2.0対応機器とUSB 3.0対応機器を組み合わせた場合の「総合的な」リスクは、USB 2.0対応機器の設計リスクと、USB 3.0対応機器の設計リスクの二つの和よりも大きくなる。
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 USBには、デスクトップ・パソコンやノート・パソコンといった「ホスト機器」と、プリンターなどの周辺機器である「デバイス機器」の2種類の規定がある。USB 2.0対応機器とUSB 3.0対応機器を組み合わせた場合の“総合的な“リスクは、USB 2.0対応機器の設計リスクと、USB 3.0対応機器の設計リスクの二つの和になるほど単純ではない。実際は、さらに大きなリスクとなる。

 それは、USB 2.0対応機器同士や、USB 3.0対応機器同士をそれぞれ組み合わせて利用するだけでなく、USB 2.0対応機器とUSB 3.0対応機器を接続して利用する場合があるからだ(表3)。この「異種」の組み合わせが存在する分、リスクが高まる。

表3 USB 2.0/3.0対応製品の組み合わせ例。異なる仕様の対応機器を接続した場合を太字にした
表3 USB 2.0/3.0対応製品の組み合わせ例。異なる仕様の対応機器を接続した場合を太字にした
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 USB 3.0のホスト機器は、USB 3.0のデバイス機器と接続するとUSB 3.0モードで動作する。しかし、USB 3.0のホスト機器はUSB 2.0のデバイス機器と接続されると、USB 2.0のホスト機器として動作しなければならない。逆に、USB 3.0のデバイス機器をUSB 2.0のホスト機器とつなげると、USB 2.0のデバイス機器として動作する。

 実際のUSB 3.0対応機器は一般に、USB 2.0用とUSB 3.0用の独立した2種類の回路を備えた送受信LSIを搭載し、このLSI内部の回路を切り替えてUSB 2.0/3.0のデータ送受信に対応する。このため、USB 3.0部分の試験項目に合格してもUSB 2.0部分の試験に合格できない場合もある。

 なお、新しい仕様が登場したばかりの時期は、従来仕様に対応したLSIと新仕様に対応したLSIをそれぞれ1チップずつ基板上に実装して、外部回路で切り替えることもある。この場合、基板上の信号反射の抑制やインピーダンス整合の調整が難しいので、あくまで一時的に取られる措置である。