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アナログ回路の応用先が広がり、新たな性能や仕様が求められるようになってきたことで、アナログ回路設計の基本を押さえることの重要性が増している。日経BP社は「決定版! アナログ回路技術者に必須のオペアンプを完全理解」と題したセミナーを、技術者塾として2016年6月23日に開催する(詳細はこちら)。オペアンプはアナログ回路の基本である。本講座で講師を務める松浦達治氏(群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教)に、アナログ回路の動向や、オペアンプを学ぶことの重要性などについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――アナログ回路の応用先が広がり、新たな性能や仕様が求められるようになったと聞きます。

群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教の松浦達治氏
群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教の松浦達治氏

 すべてのものがインターネットにつながるIoTが盛んに語られるようになり、低電圧・低電力のセンサーや、センサー周辺の回路に注目が集まっています。センサー周辺の回路や電源にはアナログ回路が必須です。「ISSCC」などの国際学会でも低雑音センサー回路や、低電力無線回路、ウエアラブル、デジタルヘルスなど極低電力の学会発表やフォーラムが盛んで、注目されています。

 センサーの用途はIoTに限りません。自動車関連のセンサーやエンジンコントロールなど高信頼性のアナログ回路や、A-D変換器前のアナログ信号領域での高精度・低雑音のアナログ信号処理が重要になってきています。

 電源回路についても、応用が広がり、適用先が変わるにつれて、様々な仕様の電源が必要になってきています。ハイブリッド車や電気自動車ではモーターを駆動する1次電池の電源の650Vを、車の電装品の12Vに向けて降圧するDC-DCコンバーター技術が必要になるなど、適用先の変化につれて様々な電源仕様が必要となってきています。

――アナログ回路について、この1年の技術動向、技術トピックスをご紹介ください。

 各種センサーの低電力化の要求に対応するため、デジタル回路はもちろんですが、アナログ回路でも電源電圧の低電圧化が進んでいます。微細化CMOSを使う場合のSiチップ内蔵のオペアンプには、0.9V~1.2Vといった電源も普通に使われるようになってきています。これらのオペアンプの構成方法ですが、従来多用されていたフォールデッドカスコード1段だけといった構成では出力振幅が取れないため、実現が難しくなってきています。そこで、ソース接地回路を用いた2段構成、または多段構成のアンプが使われるようになってきています。

 また、電源電圧が低下すると信号振幅も小さくなるため、信号対雑音比(S/N比)が劣化してきます。なぜなら、デバイスが発生する熱雑音や1/f雑音は、電源電圧が低下しても下がらないからです。そのため高精度の設計では、完全差動型という正信号と負信号の2本の信号を用いて信号を表すことにより、信号振幅を2倍、雑音をルート2倍にした、S/N比を改善できる回路が使われます。その使用比率が高くなってきています。

 さらに、A-D変換器は高精度・低電力化が進んできています。A-D変換器の内部には高性能なオペアンプが必要ですが、上記のような低電圧・低雑音化設計が進んでおり、ΔΣA-D変換器などで使われています。

 一方、センサーも超低電力が要求されなければ、電源電圧は従来通り1.8~3.3V、5Vなどが使われます。その場合も、高精度を目指して1/f雑音を低下させるためのチョッピング技術がよく用いられるようになってきています。センサーからの信号は微弱なためです。ゼロドリフトのオペアンプの発表なども多くなっています。

 電源に使われるDC-DCコンバーターでは、パワーデバイスのオン/オフ制御を行うために、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)回路が必要です。PWM制御信号は、目標電圧と出力電圧の誤差信号に対してオペアンプを使ってPID方式でアナログ制御信号を作成します。作成された制御信号と三角波を比較し、パルス幅を変調して、パワーデバイスをオン/オフ制御します。このように、各種電源でも高性能なオペアンプが使われる場面が増えてきています。