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「これまで電子測定器を操作した経験がない」「経験はあるけれども自信がない」――。2015年9月開催の技術者塾「電子計測入門」で講師を務めた小室貴紀氏(神奈川工科大学 教授)には、セミナー終了後、このような受講者からの相談が相次いだ。そこで日経BP社は「電子計測入門、測定器の実力を出し切り回路設計力を向上」と題したセミナーを、技術者塾として2016年7月27日に開催する(詳細はこちら)。エレクトロニクス技術の応用が広がるにつれて、電子計測が仕事で新たに必要になる技術者が増えている。本講座で講師を務める小室貴紀氏(神奈川工科大学 教授)に、電子計測器を使う上で重要なことを聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――エレクトロニクスが専門ではない技術者が、電子計測器を使う場面が増えているそうですね。

神奈川工科大学 教授の小室貴紀氏
神奈川工科大学 教授の小室貴紀氏

 はい。そこで今回のセミナーでは、今まで電子測定器を操作した経験がない方、あるいは経験があっても自信がない方を対象とした内容を考えています。基礎に徹します。

 この中には、「学生時代に電子計測の講義を受けてこなかったが、仕事で必要になった」という方が含まれると思います。昨年(2015年)のセミナーが終了した後で、この種の方々から複数の相談を受けました。ご自身の専門は機械系や化学系であるけれども、電子計測器を使用することになった技術者のお役に立ちたいと考えています。

――電子計測器を使ううえで重要なことは何でしょうか。

 測定の原理を理解し、測定器を正しく扱うことが今後も重要です。

 計測器自体は急激に変化するものではありません。最近話題の非接触給電を例として考えてみましょう。その現象を測定するには、全く新しい測定器を使わなければ何もできないのではありません。発振器、スペクトラムアナライザー、オシロスコープといった既存の測定器を組み合わせることにより、ほとんど全て対応できるはずです。

 昨年のインタビューで私は「(測定)結果を事前に予想しておき、予想と結果を比較する」ことにより技術者としての腕が上がるという話をしました。「結果が分からないから測定してみる」という姿勢は、思考を放棄していますし、危険があっても準備ができません。

 最初は精度の良い予想ができないかもしれませんが、経験を積むにつれて予想の精度が向上しいきます。これこそ腕が上がることなのです。さらにこの考え方を進めて、「シミュレーションをする場合にも結果を予想しておくこと」を推奨しています。シミュレーションでは物理的に危険な状態になることはありませんが、全く事前に予想をせずに結果だけを求めても、シミュレーションの結果に踊らされるだけです。

<学生>「先生、こんな結果が出ました。」
<先生>「で、何が解りましたか?」
<学生>「こんな結果だということです。」
このような不毛な会話は、実験についてもシミュレーションについても願い下げです。

 従って、今回のセミナーで力点を置くのも、「測定器を正しく使うこと」と「測定結果を予想してから測定を行うこと」の2点です。