日産自動車が開発したデザインレビュー手法 「Quick DR」が注目を集めている。その理由は、開発期間が限られる中で、不具合の発生を効率よく未然に防止できることにある。「技術者塾」では「開発者から学ぶ 日産の不具合未然防止手法「Quick DR」」〔2017年3月3日（金）〕の講座を開催する。講師は、日産自動車においてQuick DRを開発し、導入推進した同社技術顧問の大島恵氏と同社車両品質推進部主管の奈良敢也氏。両氏がQuick DRとは何かを解説する（注：日経ものづくり2013年1月号解説「短期間で効果的に問題を発見・解決するQuick DRを始めよう」を再掲載）。
[画像のクリックで拡大表示]
大島 恵 氏＝日産自動車 技術顧問
[画像のクリックで拡大表示]
奈良 敢也 氏＝日産自動車 車両品質推進部 主管
リスクアセスメント・シートによる評価によってQuick DRの適用が決まったら、次に変更の詳細な内容を整理する。
ここで使われるツールが「変更点一覧表」である（図8）。
新しいシステムや部品を設計する際、設計者はまず基準となる設計を頭の中で定義し、それをベースに新しい設計を考える。つまり、基準設計の定義は欠かせないプロセスである。
この基準設計と新規設計の差が変更点であり、ここに品質のリスクが潜んでいる。すなわち、基準設計と新規設計を比較することで、変更点の詳細を整理するのだ。
変更点一覧表の構成は非常にシンプルである。部品名称と部品の機能を記入した後、基準設計と新規設計の寸法や材質といった仕様を整理し、比較する。図面やCADデータを掲載して説明すると、デザインレビューの参加者も変更内容を理解しやすい。
Quick DRを成功に導くには、この変更点一覧表に基準設計からの変更点を漏れなく整理することが不可欠である。
[画像のクリックで拡大表示]
図8●変更点一覧表
十分に実績のある基準設計から何も変更しなければ品質は維持できる。つまり、「品質のリスクは基準設計からの変更点に潜んでいる」と考える。Quick DRの第一歩は、基準設計からの変更点と変更内容を正しく認識し、デザインレビューの参加者全員で共有することだ。
