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IoT(Internet of Things)に欠かせないのが、身の回りの様々な情報を集めるためのセンシングだ。温度や湿度、圧力や磁気、pH、加速度、変位などあらゆる1次情報を取り込む上で重要な役割を果たすのがA/D変換器である。日経BP社は「A/D、D/A変換器の回路設計と利用のポイント」と題したセミナーを、技術者塾として2016年11月10日に開催する(詳細はこちら)。本講座で講師を務める松浦達治氏(群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教)に、A/D、D/A変換器の動向や、その技術の本質を学ぶことの重要性などについて聞いた。(聞き手は、日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――A/D、D/A変換器について、この1年の市場動向、応用動向をご紹介ください。

群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教の松浦達治氏
群馬大学 理工学部 電子情報理工学部 客員教授/東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 嘱託助教の松浦達治氏

 A/D、D/A変換器に絡んで最近脚光を浴びているアプリケーションはIoT、センサーネットワークなどでしょう。IoT(Internet of Things)は、我々の身の回りの様々な情報をセンスして、ネットワークにつなげ、集めたデータを分析・活用することで、新たな価値・ビジネスを生み出そうとするものです。温度や湿度、圧力や磁気、pH、加速度、変位などあらゆる1次情報を取り込む上でA/D変換器が活躍します。特に高精度なA/D変換器が必要になるでしょう。IoTでなくとも従来から、例えば自動車のエンジン制御やモーター制御などあらゆるところでA/D、D/A変換器が活躍しています。

――A/D、D/A変換器について、この1年の技術動向、技術トピックスをご紹介ください。

 A/D、D/A変換器の分野では最近、逐次比較A/D変換器が注目されています。半導体素子の微細化・低電源電圧化が進み、オペアンプを使ったA/D変換回路、例えばパイプライン型などは性能を発揮しにくくなっています。

 そこで、オペアンプを使わない逐次比較A/D変換器に関心が集まっています。2進重みの容量アレーと電圧比較器を用いて上位ビットから下位ビットにかけて逐次にビットを判定してA/D変換します。オペアンプを使わないので微細化に適しており、(1)低電力化、(2)高速化、(3)高精度化の研究開発が盛んです。

 (1)低電力化ではセンサーネットワーク向けに極低電力の10ビット、200ksps、84nWのA/D変換器、(2)超高速化では逐次比較A/D変換器を64チャンネル並列化した8ビット、90Gsps、667mWのAD変換器、(3)高精度化ではSNDRが101dB(16.5ビット相当)、1kHz、15.7μWのAD変換器が学会報告されています。いずれも驚くべき性能です。

――A/D、D/A変換器分野の、この先の動向、今後のニーズに対応するために必要なことは。

 先述の(1)低電力化、(2)高速化、(3)高精度化は、逐次比較型に限らずA/D変換器全般の3大トレンドと言えます。(1)低電力化については、センサーネットワークなどに向けて極低電力のA/D変換器が必要になっています。(2)高速化については、データレートがますます高速化されるデータセンターなどでの有線通信方式に向けた超高速A/D変換器が求められています。(3)高精度化は、例えばセンサーからの微弱な信号を何らかの妨害信号が載った状態でセンスしなければならない場合に必要です。12~16ビット程度の精度が要求されます。

 これらに対応するために必要なことは、まずA/D、D/A変換器の基礎を学ぶことです。「どういう方式のA/D、D/A変換器があって、どの程度の分解能、動作速度、電力が必要になるのか」「それぞれの方式の特長、欠点は何か」「それらの特長を伸ばし、欠点を抑えるには、どういう技術的観点が必要なのか」「対策はできるのか」といったことに答えられる力が、A/D、D/A変換回路を設計する人には求められます。A/D、D/A変換器を利用する人にとっては、「どういう方式を選択し、どう使えば、欠点を抑えてその特長をうまく使いこなすことができるのか」がポイントになるでしょう。

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