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 先端素材と技術の展示会「エヌプラス」で見つけた先端素材の加工技術。前編ではカーボンファイバーについて、最新の中間素材、開繊(かいせん)と、焼き固めたコンポジット材を切削加工して歯車へ仕上げるなどの加工技術を紹介した。今回は無電解ニッケルメッキの専門業者に訊いた驚きのメッキ技術を紹介する。

超々ジュラルミンのビレットから削り出して製作されたのは人工衛星の電源部ハウジング。グループ会社の三栄精機工業によるもので、加工の順序などを工夫することで精度を高めている。表面処理は無電解ニッケルメッキだ。
超々ジュラルミンのビレットから削り出して製作されたのは人工衛星の電源部ハウジング。グループ会社の三栄精機工業によるもので、加工の順序などを工夫することで精度を高めている。表面処理は無電解ニッケルメッキだ。
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 ブースに大きく掲げられた無電解ニッケルメッキの文字が目に入った途端、マツダ・ロードスターの6速MTの開発話を思い出した。マツダ社内でMr.MTと呼ばれる担当者が随所に渡ってこだわりまくった超軽量でシフトフィールも素晴らしい6速MTを開発した際のことだ。シフトレバー下端とシフトリンケージを連結させる部品のクリアランスを小さくしたい。しかし狭過ぎると作動時に動きが渋くなったりカジリなどが発生してしまう。その解決策として採用に至ったのが、無電解ニッケルメッキだったのだ。そんな情報がフラッシュバックのように脳裏に蘇り、どうしても、そのメッキの詳細が知りたくなってブースに吸い寄せられてしまった。

無電解ニッケルメッキにフッ素樹脂を分散して含有させることも可能。25~30%含有させたものは、ステンレス板の上での滑り具合が格段に軽くなっていた。
無電解ニッケルメッキにフッ素樹脂を分散して含有させることも可能。25~30%含有させたものは、ステンレス板の上での滑り具合が格段に軽くなっていた。
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 金属被膜研究所は、その名の通り金属表面の処理、それもステンレス電解研磨と無電解ニッケルメッキを専門に行なう企業。無電解メッキというのは、通常は電流を流して強制的に金属をイオン化して正極側の金属表面に還元させる電気メッキと違い、素材の電位差を利用して還元させる技術。そのため、形状によって通電性の異なる場所にムラが発生するようなことはなく、複雑な形状でも均一な厚みのメッキ層が形成されると説明員は言う。硫酸ニッケルなどの溶液を用いることから電気メッキに比べ環境規制にも対応するそうだ。

無電解ニッケルメッキを施すことで金型の耐久性が高まるだけでなく、離型剤も不要になるケースもあるそうだ。写真はクルマのホイールキャップの金型の一部。
無電解ニッケルメッキを施すことで金型の耐久性が高まるだけでなく、離型剤も不要になるケースもあるそうだ。写真はクルマのホイールキャップの金型の一部。
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 通常のニッケルメッキではムラになってしまう部品でも均等にメッキ層ができるため、複雑な部品へのニッケルメッキ加工にも向いているそうだ。ニッケル自体が硬く、表面の潤滑性に優れるのに加え、無電解ならではの処理としてメッキ中にフッ素樹脂を分散させることでさらに潤滑性を高めた仕様も存在する。

 さらに表面をハニカム状の分子配列とすることで光を吸収することにより黒色化を実現した黒色無電解ニッケルメッキもあり、これにも表面を艶消し仕上げとした仕様と艶在り仕様があると言う。これは光学機器などに利用されているそうだ。艶在りの黒色仕上げは、まるでDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)のような仕上がりぶりだが、DLCほどの表面硬度はなく、コストもDLCより低い。

 アルマイトや通常のメッキより幅広い種類の金属に対応し、機能性も高い無電解ニッケルメッキは、これからさらに広い分野で利用されることになりそうだ。

黒色の無電解ニッケルメッキで仕上げられた部品。表面をハニカム状の分子構造とすることで光の反射を無くすことで実現する。光沢と艶消しがあり、潤滑性を高めた仕様も開発中だ。
黒色の無電解ニッケルメッキで仕上げられた部品。表面をハニカム状の分子構造とすることで光の反射を無くすことで実現する。光沢と艶消しがあり、潤滑性を高めた仕様も開発中だ。
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