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 東芝のいわゆる「不適切会計問題」によって、同社の半導体事業にどのような影響が及ぶのかを考えるテクノ大喜利。今回の回答者は、アナリストの立場からお答えいただくIHSテクノロジーの大山 聡氏である。調査対象の懐に入っての鋭い着眼点から、東芝の今とこれからを見通していただいた。(記事構成は伊藤 元昭)

大山 聡(おおやま さとる)
IHSテクノロジー 主席アナリスト

1985年東京エレクトロン入社。1996年から2004年までABNアムロ証券、リーマンブラザーズ証券などで産業エレクトロニクス分野のアナリストを務めた後、富士通に転職、半導体部門の経営戦略に従事。2010年より現職で、二次電池をはじめとしたエレクトロニクス分野全般の調査・分析を担当。

【質問1】今回の問題によって、東芝の半導体事業にはどのような影響が及ぶ可能性があると思われますか?
【回答】特に影響が出るとは思われない

【質問2】不安要因と不確定要因を抱えながら、東芝の半導体は、どのような戦略や戦術の変更が必要になると思われますか?
【回答】今回の問題とは別に、メモリー以外の半導体事業で改善策が必要

【質問3】製造装置や材料のサプライヤー、または同社製品のユーザーに、どのような影響が及ぶと思われますか?
【回答】特に影響が出るとは思われない

【質問1の回答】特に影響が出るとは思われない

 なぜ今回のような問題が発生したのか、その原因を外部から伺い知ることはできないが、同社の脆弱な財務体質が要因の1つだったのではないか。こう推察するのは筆者だけではないだろう。

 9月7日に発表された決算情報を見ると、3月末時点での同社の現預金は2000億円を下回っている。これは年間6兆6559億円を売り上げる同社にとって、わずか11日分の売上金額でしかない。同社の財務担当者は、このわずかな手元資金をやりくりしながら業務を遂行していることになる。

 主力事業である半導体には、巨額な投資が必要なだけでなく、それを回収するまでに時間がかかる。このため、借入金を増やしてでも手元に現金を保持していたいのが本音であろう。しかし同社の株主資本率はわずか17.1%、メモリー事業を中心とする半導体メーカーの中で、この数値が20%を割り込んでいるのは同社だけである。これ以上借入金を増やすと、この数値はさらに悪化することになる。

 もう1つの主力事業である電力・社会インフラ事業も売上金の回収には長い時間がかかるため、キャッシュフローを改善する要因としては期待できない。むしろ今回の「不適切会計」で最も修正幅が大きかったのがこの部門であり、こちらの事業については、今後の売上計上のやり方や経理財務の管理を徹底して行う必要性があるだろう。