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 京都大学医学部附属病院では、時系列データを生かした新しいバイオバンクの取り組み「BICプロジェクト(Biobank & Informatics for Cancer Project)」を進めている。がん患者の生体試料(血液、がん組織など)とともに詳細な臨床情報を時系列で収集し、「治療前の生体試料」「治療後の生体試料」などを総合的に解析することで、個々の症例ごとに効果的で副作用の少ない治療法の開発を目指すプロジェクトだ。

 京都大学大学院 医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授/京都大学医学部附属病院 がん薬物治療科 教授の武藤学氏は、「メディカルジャパン 2016大阪」の医療情報フォーラム専門セミナーに登壇し、BICプロジェクトの進捗について語った。

京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座教授の武藤学氏
京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座教授の武藤学氏

 まず武藤氏は、BICプロジェクトの意義についてこう述べた。「これまでのバイオバンクは詳細な医療情報、患者情報を持たなかった。どんな治療を受けて、どういった副作用や効果があったか、そういうものがなければ新しいバイオバンクにはならない」。

 日常の診療行為で発生する時系列の臨床情報は、電子カルテシステムにデジタルデータとして蓄えられている。電子カルテのデータは単なるテキストとして記録されていることが多いが、京大病院では10年ほど前からデータの利活用を前提に電子カルテの構造を作ってきた。そのおかげで、電子カルテに記録されたがん患者の情報は、データベース経由で高速に参照できるようになっているという。

 一方、生体試料を追加で収集するためには、患者に利用目的を説明したうえでオプトインの同意を得る必要があるが、京大病院での同意取得率は95%に達するという。同意が得られた患者の生体試料は、ゲノム解析、たんぱく質の解析、臨床情報との関連調査など倫理委員会が承認した様々な研究に利用される。「同意を得るのは大変だろうと言われることもあるが、患者さんの多くは自分の経験を医療の発展に生かしてほしいと好意的に同意してくれる」(武藤氏)。

 BICプロジェクトのバイオバンクは2014年にスタートし、2015年12月末までに1179のサンプルが登録されており、現在も1カ月に100ほどのペースで登録されているという。