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堺の第10世代工場で作製したLTPS 液晶パネル
堺の第10世代工場で作製したLTPS 液晶パネル
画面寸法は19.5型、画素数は4K(3840×2160)、精細度は226ppi。
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試作パネルの主な仕様
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 堺ディスプレイプロダクト(SDP)は、世界最大のガラス基板を使う同社の第10世代液晶工場(ガラス基板寸法は2880mm×3130mm)で、低温多結晶Si(LTPS)TFT液晶パネルの試作に成功した。現在開催中のディスプレーの学会「SID 2016」のオーサーズインタビューで試作品を初公開した(発表番号:67.1)。堺工場で作製した1号機だという。画面寸法は19.5型、画素数は4K(3840×2160)、精細度は226ppiである。

 同社は2017年初めに、この技術を使用した、ゲートドライバー回路一体型、8K、高精細(326ppi)の液晶パネルの製造を始める計画だ。今回発表したLTPS技術は、堺の第10世代工場に導入し、8Kなどの大型高精細液晶テレビや大型有機ELテレビ向けのパネルの量産に適用することを想定して進めている。既存のアモルファスSi TFT工場からの転換に必要な追加投資コストが少なく、高い生産性も期待できるという。従来技術のLTPS TFTラインに転換する場合の1/9、IGZO TFTラインに転換する場合の1/2の追加投資コストで済むという。

 なぜLTPSなのか。それは、現在の大型パネルに使われているアモルファスSi TFTに比べてLTPS TFTはキャリア移動度が高く、8Kなどの高精細液晶パネルや、素子に電流を流す有機ELパネルを駆動しやすいからだ。しかし、LTPSはこれまで、第6世代以下の基板で製造する中小型パネルへの適用にとどまっている。理由は製造装置にある。LTPSは、大型液晶パネルに使われているアモルファスSi膜にレーザーを照射してアニールし、溶融したSiを再結晶化させることによって作製する。しかし、従来のレーザーアニール技術では、第10世代の大型ガラス基板に対応する装置がまだなく、第6世代基板までしか対応できない。

 そこでSDPは、第10世代の大型ガラス基板に対応できる、全く新しいレーザーアニール技術を導入した。精密に局所的にレーザーを照射する局所レーザーアニール技術である。同社はこの技術によって作製した多結晶Siを「PLAS(Partial Laser Anneal Silicon)」と呼ぶ。なお、現在のLTPS工場では、ラインビームによって基板全面をアニールするエキシマレーザーアニール技術が使われている。

 局所レーザーアニール技術の特徴は、従来技術のように基板全面にレーザーを照射する必要がないため、レーザーアニール工程の処理時間を1桁短縮できることだ。また、従来のLTPSはトップゲート構造だが、局所レーザーアニール技術によるLTPSの場合、アモルファスSi TFTのボトムゲート構造がそのまま使える。また、IGZOのような新材料を導入する必要がない。このため、堺の第10世代工場のようなアモルファスSi TFT生産ラインの“LTPS化”を図る場合、成膜工程やフォトリソグラフィー工程の追加、およびそのための製造装置の追加が少なくて済む利点がある。

 局所レーザーアニール技術で作製したLTPS TFTのキャリア移動度は、アモルファスSiよりも桁違いに高く、IGZOと同程度だという。第2.5世代の試験ラインで作製したTFTのキャリア移動度は28.1cm2だとする。