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 パナソニックは、同社従来品に比べてGaNパワートランジスタの特性バラつきを抑制し、その成果を「ISPSD 2016」で発表した。しきい値電圧のばらつきを従来の1/3以下に、オン抵抗のばらつきを約1/3に抑えた。

 パナソニックのGaNパワートランジスタは、Si基板上にGaN、AlGaNの順に積層したHEMT構造を取る。一般にHEMT構造では、GaNとAlGaNの界面に2次元電子ガスが発生し、ノーマリーオン動作になる。そこで、ゲート直下のAlGaN層に溝を掘り込む「リセス構造」を採用し、その溝にp型GaN層を形成することで、ノーマリーオフ動作にしている。

 このとき、トランジスタがオンになるしきい値電圧は、リセスの下にあるAlGaNの厚さ(リセス底とGaN層の間にあるAlGaNの厚さ)に依存する。ただ、ドライエッチングによって溝を掘ると溝の深さにばらつきが生じて、リセス下のAlGaN層の厚さがばらつき、しきい値電圧に個体差が出てしまう。

 そこで今回、リセスを掘った後にAlGaN層を再成長させる方法を採用した。具体的には、以下の手順を踏む。まず、Si基板上に、GaNとAlGaNのエピタキシャル層を設ける。次に、リセスを掘る。従来はわずかにAlGaNを残したが、今回はAlGaN層の下のGaN層に到達するまで深く掘る。続いて、AlGaN層を再成長させる。その後、p型GaN層を設けた。

 この方法により、しきい値電圧とオン抵抗のばらつきを抑えた。具体的には、従来方法ではしきい値電圧1.58Vのときに標準偏差(σ)は229mVだったのに対して、今回の方法では、しきい値電圧1.57Vのときに標準偏差(σ)は63mVだった。オン抵抗に関しては、従来方法で53.7mΩでσは3.0mΩだったのに対して、今回の方法では同じオン抵抗でσは1.1mΩだった。

 なお、再成長させるAlGaN層の厚さによって、しきい値電圧を変更できる。その範囲は、1.0~2.3Vとする。