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 長崎県・五島列島の南西部に位置する五島市。同市で構築・運用されている調剤情報共有システムは、各地で展開される地域医療情報連携とは異なるアプローチで取り組むケースとして注目に値する。

 そのアプローチとは、既に電子化が完了し共有が容易な調剤情報から、地域医療介護連携を目指すというもの。診療情報連携のあるべき姿を“作り込む”アプローチではなく、現時点で共有しやすい情報の取得からスタートし、全薬局参加による「実効性重視」で構築したシステムである。

 五島薬剤師会 会長の菅原正典氏は、「国際モダンホスピタルショウ2016」(2016年7月13~15日、東京ビッグサイト)のセミナーで、その取り組みについて紹介した。

五島薬剤師会会長の菅原正典氏
五島薬剤師会会長の菅原正典氏
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これまでのシステムの課題を回避

 五島市の調剤情報共有システムは、行政(市)と地域薬剤師会に、長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科の離島・へき地医療 医療研究所が協力して計画したもの。システム開発は、クラウド型電子カルテサービス「医歩ippo」を提供するメディカルアイ(東京都港区)が行った。

 開発したシステムの特徴は、次の6点だ。すなわち、(1)行政と地域薬剤師会が協力、市内の全保険薬局が参画、(2)住民全員を対象とした仕組み、(3)薬歴と見守り情報を合わせて管理し、救急対応時に有用性を持つ、(4)共有情報や取組内容を将来拡大可能な基盤とする、(5)開発済みのクラウドサービスの活用により、自治体予算で継続可能な費用に抑制、(6)クラウド型の採用および遠隔バックアップにより、災害時にも強い仕組み、である。

 菅原氏は、これまでの地域医療連携システムで見られた課題として、「補助金に頼って持続困難に陥るビジネスモデル」「あるべき姿を求めて高額で複雑なシステム」「参加施設が増えず成果が十分に得られないシステム」などを指摘。それに対して今回のシステムは、「基盤部分を自治体主導で構築して通常予算で維持可能な費用に抑制し、既に全施設で電子化が実現している薬局の調剤情報を共有すること、そして、最初から全住民を対象として、すべての調剤薬局をネットワーク化するアプローチをとった」(同氏)と説明する。

 構築したシステムの開発費用は約1300万円。地域医療再生基金を活用した。年間約200万円のランニングコストは市が負担する。