医療保険の資格確認が第1のアプリケーション
次に山本氏は、検討された医療等IDのあり方として以下の5点を挙げた。
(1)国民すべてが持ち(悉皆性)、かつ一意性を確保されている必要性があるが、個人に使用の拒否権を認める。
(2)IDは、システム障害などを考慮し、視認できることが望ましい。現状では医療等IDは複数種の発行が計画されており、「そのうち少なくとも1つは視認でき、覚えようと思えば覚えられる番号になるだろう。その他は千数百桁の符合になる」とした。
(3)IDは(一意性のあるIDをキーに)目的別に複数あるべきだが、(4)一方で、「1人が複数の(一意性のある)IDを持つことができるかは、微妙な問題をはらんでおり結論が出ていない」。その理由は、「人には自身でも忘れたい病気、絶対に人に知られたくない病歴がある。とはいえ重篤な状況に陥ったとき、病歴を知らないと治療に支障を来すことがある」とし、IDを変更できるか、余程の場合は複数持つことを認めるべきだろうと検討されている。
(5)また、(IDが漏えいしたときなどを考慮し)変更可能であることは保証すべき、という考えに至っている。
マイナンバー制度のインフラを活用した医療等IDは、厚生労働省の「医療等分野における番号制度の活用に関する研究会」の計画で、第1アプリケーションとして医療保険のオンライン資格確認が開始されることになっている。「このときに払い出される保険資格確認のためのIDは、保険者を異動しても生涯変わらない番号で、マイナンバーカードを取得していない人にも適用できるよう“見える番号”が検討されている」(山本氏)。
この資格確認用番号(仮称)を払い出すために、医療保険者の接続・符合取得を集約する機関(支払基金・国保中央会が共同で運営)の機関別符合と1対1で管理されるのが、“キーとなる識別子”である。地域医療連携やデータ収集など目的に応じて派生させていく各医療等IDは、すべてこの“キーとなる識別子”が基になる。