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健康経営に取り組むことで得をする社会を

 予防・健康管理の重点対策として経済産業省が取り組むのが「健康経営」である。富原氏は「今まで社員の健康づくりへの取り組みはコストと考えられていた。それを“攻めの投資”に変えていくのが健康経営の狙い」と位置付けた。

 積極的に健康づくりに投資することで社員の活力が向上し、生産性が高くなる。それにより必然的に組織が活性化されて業績の成長につながり、企業価値そのものが高まる――。こうしたビジョンのもと、「健康づくりを経営者が取り組むべきテーマとして提唱した」(富原氏)。

 2015年(平成27年)から東京証券取引所と共同で開始した「健康経営銘柄」は、健康経営に意欲的な企業に与えられるお墨付きだ。富原氏によれば、上場企業の2割は健康経営度調査に回答し、「大企業には少しずつ浸透してきた印象がある」とする。社員の健康づくりに気を配る姿勢がホワイト企業とみなされ、その噂が波及しているのだという。実際に就職市場にはインパクトを与えているとのことで、就活生とその保護者からはポジティブに受け止められている。

 大企業だけでなく、中小企業も民間団体の「日本健康会議」と連携しながら健康経営に取り組む動きを加速させている。2017年8月現在、「健康経営優良法人2017(中小規模法人部門)」の認定数は318法人に上る。

 認定を受けるためには詳細な健康経営度調査に答える義務があるが、調査シートを収集してからのデータ分析にも着手し始めた。例として挙げた土木建築業種の23社に対する分析では、健康経営における施策が健康改善に寄与していることが判明した。さらに全国各地の地方銀行や信用金庫などで、健康経営に取り組む企業に対して低利融資を実施する団体が増えてきており、備品を調達する際の加点要素として健康経営を捉える自治体も出てきている。「このように健康経営に取り組むことで得をする社会を確立し、新たな日本の企業文化としていきたい」(富原氏)。