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現場の課題をどうプロダクトにつなげたか

 医療現場のニーズを出発点に革新的な医療機器開発の創出を目指す考え方としては、バイオデザインがよく知られている。臨床に携わった3人のパネリストは、現場の課題をどうプロダクト開発に発展させたのか――。討論では、この点の議論が展開された。

 救急外来の現場にいた沖山氏は、冬の救急外来にインフルエンザとノロウイルス患者が殺到する現状に課題意識が生まれたという。「現状のインフルエンザ検査は感度が低く、しかも症状が出てから24時間経たないとウイルスを検出できない。一方、20年、30年の経験を積んだ優秀な医師なら喉の炎症を診るだけで検査キットを上回る精度で診断できる。習得に数十年かかる診察所見を、今ならディープラーニングで可能になるのではと考えたのがきっかけだった」(同氏)。

アイリス 代表取締役の沖山翔氏
アイリス 代表取締役の沖山翔氏
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 中核病院の救急外来を担当した医師たちがバーンアウトする現実を見て、「辞めていく医師の多くは、時間をかければ治せるはずなのに、その時間が与えられない徒労感が大きい」(沖山氏)と指摘。インフルエンザだけではないものの、救急外来に疲弊をもたらす一因がそこにあるという課題意識もあったとした。

 小川氏は、今なぜ聴診器開発だったのか、その背景を次のように説明した。大動脈弁狭窄症は、超音波診断装置で確定診断するが、「心臓超音波の技術と経験を持った医師ほど、スクリーニングとして聴診器による聴診を重要視する。侵襲度の低いカテーテル治療が可能になった現在、早期にスクリーニングして超音波につなげることが大切だ。そのためにも聴診器の自動化が必要だと考えた」(同氏)。

 また、最近注目を集めているオンライン診療では、「視診だけで聴診が置き去りにされている」と指摘。「内科診療の基本は聴診にある。遠隔で聴診可能な聴診器開発は、大きな変革をもたらす」(小川氏)とした。

AMI 代表取締役の小川晋平氏
AMI 代表取締役の小川晋平氏
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 佐竹氏は、起業に向けて2つの視点を考えたという。一つはアンメット・メディカル・ニーズを満たしたいという志だ。「禁煙外来で処方される禁煙補助薬による治療では、1年後の禁煙継続率は3割しかないという現状があった。日常の習慣や考え方を変える行動療法によって禁煙継続率を5割、6割に上げたいと考えたのが禁煙アプリ開発の発端だった」(同氏)。治療効果を上げられる方法があるはず、という現場目線での課題解決を目指したというわけだ。

 もう一つの視点は、会社としての社会的意義である。医療費が高騰する原因の一つが新薬開発など研究開発費の高騰だとし、「アプリという“薬”でも“医療機器(ハードウエア)”でもない全く新しいツールを活用することで、低コストで薬剤と同等以上の治療効果を出すことができれば、社会的な価値は非常に大きい」(佐竹氏)と考えた。