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医療従事者か技術者か

 あらたなソリューションの開発や社会実装において、医師と技術者はいかに協働するべきなのか。この点についても議論が交わされた。

 医療者と技術者の2者だけではうまくいかないと主張したのは、沖山氏だ。「(医療者と技術者の)間を取り持つ“翻訳家”が必要で、共通言語で議論できることが重要だと考えている」(同氏)。また、医療を熟知し、医療機器開発であれば薬事や臨床試験も知らないといけない。事業運営では組織設計やファイナンスにも通じていることも大切だとしつつ、「それを持ち合わせている人は、そうはいない」(同氏)と指摘。自らが翻訳家としていろいろな要素を一つのストーリーに仕立て上げられるよう、「自ら成長していくことが重要だと考えている」(同氏)とした。

 「医療従事者でなければ現場の課題やニーズは分からない」。そんな意見は少なくない。ただし、佐竹氏は必ずしもそうではないと見る。「医療現場のニーズは医療従事者にしかわからないというのは、言い過ぎだと思う。例えば、60人以上の医師に丁寧にヒヤリングしたコンサル担当の(医師ではない)社員がいる。彼を見ていると、現場をきちんと理解していることが分かる。医療従事者でなくとも、(努力次第では)課題やニーズを的確につかむことはできる」(同氏)とした。

キュア・アップ 代表取締役社長の佐竹晃太氏
キュア・アップ 代表取締役社長の佐竹晃太氏
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 この点については沖山氏も、医療従事者であるか技術者であるかではなく、純粋な課題意識を持つことが大切だと指摘した。「医師から見ると当たり前の業務が、患者や技術者からは不可解に見えることは多々あるだろう。医師からすると、こういう理由があって…と言い訳をしがちだが、言い訳を越えることがイノベーションであり、技術だと思っている。ピュアな問題意識を持っていることこそが大切だ」(同氏)。

 最後に各氏が共通意見として語ったのは、起業はあくまで手段であるということだ。「課題解決は大学の研究室や病院の方がいい場合もある。起業が目的になってはいけない」(小川氏)、「ビジョンやゴールが最も大切であり、その近道が起業であったということ」(佐竹氏)。

 沖山氏は、「医師の仕事の範囲は、患者の行動変容を含めた領域まで広がっている。起業を通じてプロダクト開発したり、AIの医療応用を手掛けたりするもの、医師としての仕事の範囲だと考えている」と締めくくった。

■変更履歴
記事初出時、「メンタルヘルスアプリ」とあったのは「NASH治療アプリ」でした。お詫びして訂正します。また、小川氏の最後のコメントを一部追記いたしました。記事は修正済みです。