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 「今大会のテーマにある『二兎を追え』には、何かを犠牲にすることなく(医療情報の利活用とプライバシー保護という)2つの目的を同時に達成するという意味がある」――。第35回医療情報学連合大会(第16回日本医療情報学会学術大会)の大会長である東京大学 大学院医学系研究科医療経営政策学講座の山本隆一氏は2015年11月2日、同大会の大会長講演に登壇し、自らが医療情報に関わるようになったいきさつや、本大会のテーマである「医療情報の利活用とプライバシー保護~二兎を追え~」に込めた思いを語った。

第35回医療情報学連合大会(第16回日本医療情報学会学術大会)大会長の山本隆一氏
第35回医療情報学連合大会(第16回日本医療情報学会学術大会)大会長の山本隆一氏

 医師である山本氏はもともと内科の臨床を経て、大学で呼吸器を専門とする病理学を研究していた。「臨床は好きだったが、診られる患者の数は限られる。病理学は臨床医を通して、より多くの患者の症例を診ることができる」(山本氏)。そして、コンピューターが得意だった山本氏は大学でやっていることを多くの人に伝えたいと思い、大学のWebサーバーの構築を手掛けるようになった。当時は日本のインターネットの黎明期にあたり、ほかにWebをサーバーやっているところはほとんどなかった。そんな中、山本氏はSSLを使ったWebサーバーを独力で構築。続いてアイオワ大学の医療ライブラリ「バーチャルホスピタル」と提携してその日本支部を作り、当時研究していた呼吸器の病理学ライブラリを登録してネットで公開していった。

 そのころから医療情報の分野に深く入り込むようになり、「医療に関わる情報をネットワークでどうやって安価、安全、確実にやり取りできるかをテーマに研究するようになった」(山本氏)。経済産業省のプロジェクト(当時は通商産業省)では、宮地充子氏の協力で実装した楕円暗号による公開鍵暗号や三菱電機の共通鍵暗号「MISTY」によるハッシュ関数を使って、ネットワークのセキュリティを確保したりした。「楕円暗号はRSAに比べて計算量が少ない。当時はコンピューターの処理能力が低かったので、楕円暗号を使う意味は大きかった」(山本氏)。