Key-IDから目的別に生成されるIDから成る医療等ID
日本医師会常任理事の石川広己氏は、まず日本医師会でこれまで検討してきた医療等IDの考え方についてあらためてまとめた。その要点は4つ。
(1)1人に対して目的別に複数のIDを付与できる仕組みとする、(2)本人の希望に応じて、一定制限の中で知られたくないと思った場合や忘れたいと思った場合に名寄せや検索ができないなど、情報をコントール可能な仕組みにする、(3)患者同意を原則として、それぞれの医療等IDでの情報の突合が可能な仕組みとしておく。同時に、本人が同意した範囲を確認できる仕組みも提供する、(3)医療等IDを発行する根拠に関する法整備、医療等IDの変更事由方法や運用・保護状況を監視・監督する機関などの法整備を行う、である。
また、実際に医療等IDをどう発番し、それを用いてどのように個人や医療機関、保険者と情報連携するかについて検討した仕組みを解説した。それによると仕組み全体の要素は、「保険等資格確認PF(プラットフォーム)」「医療等ID発番・管理PF」「Key-ID」「資格確認用番号」「ID-*」「PF間コード」で構成される。
「保険等資格確認PF(プラットフォーム)」は、全保険者から委託を受けて被保険者のマイナンバーから医療保険用の機関別符合の生成要求・管理するもの。これとは独立した、医療等IDを発番・管理するのが「医療等ID発番・管理PF」。「Key-ID」は、目的に応じて発番される医療等IDのすべての元となる一意的なID。Key-IDから生成される医療等IDの1つで、視認できる数字によるのが「資格確認用番号」。医療情報連携等の目的別に発行される医療等IDである「ID-*」、そして、「PF間コード」は、保険等資格確認PFの中で医療保険用機関別符合とひも付けされるものである。
これを踏まえて石川氏は、保険等資格確認PFが代行する個人番号の初期登録、資格確認用番号付き保険証の発行、医療等ID発番・管理PFで資格確認用番号付き保険証の確認方法、医療等ID発番・管理PFでの新規のID-xを発番申請する仕組みなどをそれぞれ説明した。「医療等ID発番・管理PFでの新規のID-xを発番する仕組みが、実際に医療機関で一番利用されることになり、Key-IDから発行されたID-xと個人情報が診察券番号とひも付けて管理される。これが医療等IDの1つの形であり、臨床研究のためのNDB(ナショナルデータベース)等への情報登録ではKey-IDから生成されるID-yが個人識別に利用され、医療情報では別に生成されるID-zを基に紹介元医療機関との情報突合に使われることになる」と述べた。
その一方で石川氏は、医療とIDの位置やそれを扱う組織の位置付け、医療等ID発番のタイミング、本人同意の取得方法、個人情報保護法と番号法との関係といった法的な位置付けなど、多くの検討事項が残っていると指摘した。