PR

疾病体系が変わる

 では、AIは具体的には医療にどのような変化をもたらすのか。水野氏が挙げるのは「疾病体系が変わる」「疾病の診断が変わる」「疾病の治療が変わる」「医療開発が変わる」「医者が変わる」の5点だ。

 「疾病体系が変わる」とは例えば、次のような事例を指す。昨今のゲノム医療では、Aという遺伝子変異を持つがんは、発生臓器がどこであっても同じ抗がん剤が効く、というケースが明らかになってきた。これによって、従来の発生臓器別の分類とは異なる、遺伝子変異や抗がん剤(治療薬)から見た「がん分類の再編」が起こる。

 ドラッグリポジショニング(Drug repositioning)は、この再編を疾病全般へと広げる。糖尿病治療薬Bががんにも関節リウマチにも効く、といった事例が増えてくることで、治療薬から見た「疾病分類の再編」が起こるわけだ。さらには、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病、認知症などを「血管を主座とする同じ病気」という共通項でくくれば、これは「障害組織から見た疾病分類の再編」を意味する。

 AIの登場によって、こうした新しい疾病領域の形成(ひもづけ)とその多次元化が加速度的に起こり、「臓器別診療科という枠組みが解体される」(水野氏)のが、これからの医療の特徴だという。AIはこうした“つながりの連鎖”を疾病体系にもたらすだけでなく「どの次元から疾病を眺めれば、最適な診断や治療につながるかも教えてくれる。ここまで来ると、もはや人間の頭脳では対応できない」(同氏)。