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量産車で48Vの採用が始まる

 LV148対応の電源システムは、既に量産車での採用が始まっている。

図2●独Audi社が2012年に開発した48Vシステムの先行開発車。
図2●独Audi社が2012年に開発した48Vシステムの先行開発車。
日経Automotive Technology 2014年1月号より転載。イメージはAudi社。
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 48Vシステムを追加することでエンジンの始動を補助し、ストップ/スタート時それぞれの動作をよりスムーズにした快適なアイドリングストップ車を作ることができるようになった。また、エンジン負荷から独立して動作する電気ブースター技術を統合して、加速性能を向上させた製品も登場している。インダクションシステムとインタークーラーの間に置いて48V電源を使用してターボを始動させるコンプレッサーが開発されるなど、48V電源のメリットを生かして高付加価値化した製品の開発が進んでいる。

 そして、一部の自動車メーカーでは、マイルドハイブリッド車の市場投入も開始した。内燃エンジン車と比較して、燃費を10%~15%改善し、CO2排出量も削減できるとしている。

 電源システムの高電圧化のメリットは、まだまだある。高電圧化によって電力供給に用いるハーネスの断面積を小さくできるため、ハーネスのサイズと重量を抑えられる利点もある。ハーネスの総延長は、現在のハイエンド車両では4kmを超えるものもあり、車両重量の軽量化への効果は大きい。

 今後、自動車は、パソコンと同様に、多くの後付けの車載機器を利用して機能向上できるようになる可能性がある。平均的な米国人は1日の時間の9%を自動車通勤に費やしている。48Vシステムの実用化によって、高出力車載機器が搭載可能になった。ドライバーのニーズに合わせてマルチメディア機器やテレマティクス機器を搭載し、仕事の生産性の向上やエンターテインメントによる移動時間の充実に大きく寄与すると考えられる。

自動運転時代を見据える

 48Vシステムの普及は、自動運転車の実現の前提となる。自動運転を実現するためには、コンピューター、カメラ、レーダー、LiDARセンサーなど、高度な電子機器を数多く搭載する必要がある。これらは全て、これまでの車載機器よりも多くの電力を消費するものばかりだ。また、自動車をインターネットに接続するだけでなく、周囲の自動車やビル、信号機など周辺環境に存在するさまざまな構造物との間とも情報をやり取りする必要がある。このためにも、多くの電力が必要になる。

 自動車メーカーの多くは、今後数年間のうちに、自動運転車の実現に必要な要素技術が段階的に実用化されてくると予想している。自動運転に関わる電子機器が続々と搭載されてくるのを先回りして、48Vシステムの実用化が進む見込みである。

LV148対応チップの登場が待望される

 48Vシステムの追加によって、自動車バリューチェーン上のサプライヤーは、設計上の困難な問題に直面することになる。特に大きな影響を受けるのが、半導体および電子制御装置(ECU)のプロバイダーである。動作保証する電圧範囲の高圧化はもちろんのこと、場合によっては製品の部分的な再設計を余儀なくされる。

 DC-DCコンバーターのメーカーにも、高電圧化に対応したICを開発し、提供することが求められている。これまでAnalog Devicies社は、電力変換効率に優れたDC-DCコンバーターを数多く設計・開発してきた。これらのチップはシステムの低消費電力化を実現するとともに、電力損失の大幅な低減によって熱設計の簡素化にも効果を発揮してきた。

 LV148対応の電源システムの実用化に際して、DC-DCコンバーターには12Vシステムと48Vシステムの間で双方向に降圧および昇圧できる機能が求められるようになった。48Vシステム向けのリチウムイオン・バッテリーと12Vシステム向けの鉛蓄電池のいずれにも充電可能で、必要に応じて両方のバッテリーの電力を合わせ、大電力を消費する機器に同時供給できる柔軟性も必要になってきた。

 2系統の電源システムを併用しても、システム構成がなるべく複雑化しないような工夫も必要だ。これまでの48V/12Vデュアル・バッテリーに向けたDC-DCコンバーターのほとんどは、昇圧と降圧に別々のパワーデバイスを使用していおり、回路を構成する部品点数の増加を招いていた。