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「健康になってもらわなければ儲からない」

 デジタルヘルス業界から見た場合には、保険業界がこの分野に参入することにはどのような意味があるのだろうか。その最大のインパクトは「マネタイズの仕組みが見えており、健康という分野に経済性が回り始める」(メットライフ生命の前中氏)と期待されることだろう。

 加入者が健康になることが、すなわち保険会社の利益に結びつく。これが保険というビジネスの基本原理だ。例えば「タバコを吸う人が禁煙すれば、がんの発症リスクが減る。保険会社にとっては、支払いが減ることにつながる」(メットライフ生命の前田氏)という図式が成り立つ。言葉を変えれば「加入者に健康増進に取り組んでもらうだけではダメ。その結果として実際に健康になってもらわなくては我々の利益には結びつかない」(前田氏)という、本気にならざるを得ない理由があるわけだ。

メットライフ生命はヘルスケアベンチャー支援に向けた「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」を始動。2017年4月に最終プレゼンテーションを開催した
メットライフ生命はヘルスケアベンチャー支援に向けた「MetLife Collab Japan アクセラレータープログラム」を始動。2017年4月に最終プレゼンテーションを開催した
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 加入者が健康になれば、本人は健康という財産を手にする。保険会社は利益を手にし、国にとっては医療費削減や生産性向上につながる。こうした「明快なWin-Winの仕組みをつくれる」(前中氏)ことが、保険業界が手掛ける健康支援サービスの特色だ。

 保険会社が既に一定の顧客基盤を持ち、数万人規模の営業人員という消費者とのコンタクトポイントを持つ点も、ベンチャーが主導権を握ってきたこれまでのヘルスケアビジネスとは一線を画す。「グループで1000万人の顧客を持つことは、健康分野を手掛ける上でも大きい要素になる」と第一生命の由水氏は自信をみせる。保険会社はこうした基盤を生かし、健康分野のさまざまなサービスを加入者に直接届けられる立場にある。生命保険であればサービスの対象期間は生涯にわたり、顧客と付き合う期間が非常に長いことも、ロングテールで利益をあげる上では格好の条件だ。

 健康分野を手掛ける上では極めて重要な要素である“信頼感”の面でも、保険会社は一歩先をゆく。「顧客との信頼関係に基づくビジネス」(明治安田生命の薄井氏)を長年、手掛けてきたからだ。保険を選ぶ要素として、その保険会社に信頼が置けると感じるかどうかは、誰にとっても大きなポイントだろう。さまざまな健康支援サービスの選択肢がある中で「質の高い骨太なサービスを提供することが保険会社の責任だと考えている。この会社が勧めるヘルスケアサービスなら、安心して選べる。そんなふうに思われるサービスを開発したい」とメットライフ生命の前中氏は話す。

 健康分野の情報やサービスについては、その信頼を揺らがせる問題が相次いでいる。そうした中、信頼性の高いコンテンツの提供者を目指す上で、保険会社は有利な立場にある。「どうせ健康アプリを使うなら『健康第一』にしよう、と思ってもらいたい」(第一生命の由水氏)という期待には、顧客からの信頼感という裏付けがあるのだ。