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アプリで治療空白を埋める

 東京女子医大や浅草ハートクリニック、国際医療福祉大学 三田病院の事例から分かるように、遠隔診療と遠隔モニタリングの組み合わせが先行しているのは、循環器領域だ。ネットワークとつながる家庭用血圧計や心電計を手軽に利用できることが大きい。東京女子医大の市原氏は「遠隔診療は高血圧診療以外の領域、例えば脂質異常症や糖尿病などの診療にも有効だと考えているが、これらの疾患では遠隔でのモニタリングが難しいという課題がある」と指摘する。

「都市部の診療所を中心に、幅広い診療科で我々の遠隔診療サービスへの引き合いがある」と話す情報医療 代表取締役の原聖吾氏
「都市部の診療所を中心に、幅広い診療科で我々の遠隔診療サービスへの引き合いがある」と話す情報医療 代表取締役の原聖吾氏
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 ただし、血糖値を非侵襲で測れる機器などの開発が進められているように、遠隔でモニタリングできる疾患領域はこの先、広がっていく可能性が高い。京都府立医科大学の加藤氏は、同氏が専門とする眼科領域では将来、「眼底疾患を家庭でモニタリングできる機器も登場するだろう」と予想している。

 遠隔診療にモニタリングやAIを取り入れる動きは、サービス事業者の間でも活発だ。情報医療の「curon」やMRT(東京都渋谷区)の「ポケットドクター」などの遠隔診療サービスでは、オムロン ヘルスケアの健康管理アプリ「OMRON connect(オムロン コネクト)」と連携し、家庭用血圧計などで測定したデータを遠隔診療に取り込めるようにしている。

 curonはAIの要素も取り入れており、患者のそれまでの受診タイミングなどから、次の受診時期を適切なタイミングで通知する機能を備える。今後は、より詳しい患者の状態に踏み込んだ個別化した支援をAIで実現していく考え。京都大学とは、遠隔診療とAIを組み合せて服薬継続をサポートする仕組みの実証研究を共同で進めている(関連記事10)。

 モバイルアプリを活用し、患者の状態把握や治療介入の密度を高めようという提案もある。ニコチン依存症や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療をアプリで支援する“治療アプリ”を手掛けるキュア・アップ(東京都中央区) 代表取締役社長で医師の佐竹晃太氏は、遠隔診療の真価が発揮されるためには「診断と治療の機能を実装することが非常に重要だ」と指摘する(関連記事11)。遠隔診療は対面での診療をオンライン化したものであり、診療と診療の間の“治療空白”を埋めるものでは必ずしもない。診断と治療までがオンライン化して初めて、遠隔医療の一連のフローが完成し、普及に弾みがつくというのが同氏の見立てである。

アプリなどを利用することで、診療と診療の間の“治療空白”を埋めることの重要性を訴えるキュア・アップ 代表取締役社長の佐竹晃太氏
アプリなどを利用することで、診療と診療の間の“治療空白”を埋めることの重要性を訴えるキュア・アップ 代表取締役社長の佐竹晃太氏
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 佐竹氏率いるキュア・アップは2017年5月、呼気中の一酸化炭素(CO)濃度測定を遠隔診療に導入できる「ポータブルIoTデバイス」と、測定結果を患者と医師が確認し共有できる「ニコチン依存症治療アプリ・クラウド」を組み合わせたソリューションを開発した(関連記事12)。呼気CO濃度を在宅などで測定できるようにすることで、遠隔診療における治療経過を正確に把握できるようにすることを狙った。

 2017年5月に開催された「第60回 日本糖尿病学会年次学術集会」では、ともながクリニック糖尿病・生活習慣病センター(東京都新宿区)が、血糖コントロールが不良な糖尿病患者の意識・行動変容にモバイルアプリがもたらす効果を発表した。血糖値や血圧、体重などのバイタルデータや食事、運動などをアプリに記録し、自己管理を支援するウェルビー(東京都中央区)の「Welby マイカルテ」を用いた検証である。同アプリを利用することで、自己管理の動機づけや継続に一定の効果があったとしている。