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ガイドライン策定の動きも

 福岡市と福岡市医師会、医療法人社団鉄祐会、インテグリティ・ヘルスケアは2017年4月、かかりつけ医の機能をオンライン診療などのICTで補完する仕組みの構築に向けて、「ICTを活用した『かかりつけ医』機能強化事業」の実証を開始した(関連記事7)。

ICTを活用した「かかりつけ医」機能強化事業に関する記者会見の様子。左から福岡市医師会 常任理事の松本朗氏、福岡市 保健福祉局 政策推進部長の中村卓也氏、医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤氏
ICTを活用した「かかりつけ医」機能強化事業に関する記者会見の様子。左から福岡市医師会 常任理事の松本朗氏、福岡市 保健福祉局 政策推進部長の中村卓也氏、医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤氏
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 この実証では、インテグリティ・ヘルスケアが開発したシステム「YaDoc」を活用し、「オンラインモニタリング」「オンライン問診」「オンライン診察」の3つにより医師と患者をつなぐ取り組みを実施する。実証に参加する医療機関に来院した患者は、受付スタッフからタブレット端末を受け取り、専用のガイドに従って問診を入力。この結果を医師は診察室で事前に確認できる。これを繰り返すことで、患者の時系列の症状変化などがシステム上に記録され、医師もそれを参照できる。

 こうした対面診察の上で、症状や内容によってはビデオチャットで医師と患者宅をつないで診察する、いわゆるオンライン診察の機能も備える。経過観察の部分をオンラインで補完することで、トータルの診察の質を高める考えだ。まずは福岡市内の20弱の医療機関において実証が始まった。

 鉄祐会理事長でインテグリティ・ヘルスケア会長の武藤氏は今回の取り組みについて、「医療のコアの領域に切り込んでいくという観点からは、メジャーな疾患を対象に都市部で実証を始められたことには大きな意義がある。かかりつけ医の機能強化に対し、オンライン診療がどのような意味を持つかを明らかにしたい。2018年度診療報酬改定の動きを意識しつつ、できるだけ短期間で今回の取り組みのエビデンスを出していきたい」と話している。

 こうしたエビデンス構築の動きに加えて、精神科領域では遠隔診療の活用に向けたガイドラインづくりも始まった。慶応義塾大学 医学部 精神・神経科学教室 専任講師の岸本泰士郎氏が研究責任者を務めるAMEDの委託研究「J-INTEREST(Japanese Initiative for Diagnosis and Treatment Evaluation Research in Telepsychiatry)」では、ビデオ会議システムなどのICTを用いた精神科遠隔医療に関する研究が進行中。精神科遠隔医療のガイドラインの暫定版を策定する方向で検討を進めており、関係する学会や関係者と議論を進めていく。

 この検討に加わっている新六本木クリニックの来田氏は「これまでは講演会などに呼ばれると、遠隔診療の有用性について話すことが多かったが、最近はあえて課題を指摘している。どのように運用していくのが遠隔診療の正しい姿なのか、そのガイドラインづくりに貢献していきたい」と話す。

 同じ精神科領域でも、疾患によって遠隔診療の有効な使い方は異なる。強迫性障害などでは遠隔診療の有用性が高い一方で、「パニック障害の患者は一般に、外出の頻度が減って引きこもりがち。そうした患者では、通院してもらうこと自体が行動療法につながる。こうした患者に対して安易に遠隔診療を利用すると、かえって治療を阻害しかねない」と来田氏は指摘する。疾患ごとの特性を考慮した運用やそのためのガイドラインづくりが欠かせないわけだ。